2020年10月、菅総理は、「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする(※1)、すなわち2050年カーボンニュートラル(※2)、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言されました。これは世界的な潮流であり、日本も果たさなければならない約束事です。実はこの脱炭素社会の実現のためには、“これからの家づくり”がとても重要だということをご存知でしょうか。今回は、脱炭素社会と家づくりの関係性についてお話ししたいと思います。
家庭部門のCO2削減目標は、なんと66%!
2050年のカーボンニュートラル実現のために、政府方針が定められました。それはCO2を2030年度までに2013年度比でマイナス46%、うち家庭部門は66%の削減というものです。
「家庭部門で66%の削減?!」と驚かれた方も少なくないと思います。つまり、リフォームを含め、これからの家づくりに求められることは、「エネルギー消費量を大幅に抑制する家」であり、さらには「エネルギーの自給自足を目指す家」ということになります。
もう少し分かりやすく言えば、現在、建てられている一般的な住まいよりも、断熱性能・気密性能を大幅に向上させなければならないということです。太陽光発電などを搭載し、省CO2・ゼロCO2に貢献する暮らしを目指さなければならないということになります。
実は、新築住宅における太陽光発電義務化が検討され始めています。当面は見送られること となりましたが、8月10日に示された政府の工程表では、2030年までに新築戸建ての6割に導入するという目標が盛り込まれ、2025年度には新築住宅の省エネ基準適合の義務化も示されました。
このような背景から、今後の家づくりでは、「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス※3)」や「長期優良住宅」(※4)などの建築が、より求められていくことになるのです。
これからの家づくりは、一人ひとりの未来への高い意識が求められる
ということは、物理的に考えて「建築費用が増す」可能性が高まります。もちろん、ハウスメーカーもコストダウンの努力をしますし、義務化や推進に対しては国からの補助金が交付される公算が高いですが、上がったコストすべてがそれで賄えるとは、残念ながら考えにくいのではないでしょうか。
しかし、地球温暖化の問題は、もはや私たちの日々の暮らしに影響を与えています。日本でも集中豪雨と言った自然災害が増えていますし、7月にはドイツで大洪水が起こりました。同国のシュルツェ環境相は「ドイツに気候変動が到来した」と指摘し、ゼーホーファー内相も「この惨事が気候変動に関係していることを疑うことはできない」と語っています。
今回のカーボンニュートラル実現のための目標は、予算にゆとりのある方や地球環境への意識が高い方に働きかけるものではなく、“すべての国民”に要請されているものです。「コストが高くなるなら、今まで通りの断熱・気密性でいい」という発想ではなく、これからの家づくりでは、自分の住む街、国、世界の人々のためという観点が重要になってきます。
「ZEH」や「長期優良住宅」を積極的に検討しよう!
これから家づくりをスタートさせるにあたっては、「ZEH」や「長期優良住宅」をはじめとする脱炭素社会に配慮した住宅をぜひ検討してください。まずは自分たちから未来を変えていく。そんな想いを、家づくりに込めて欲しいと思います。
※1:「排出を全体としてゼロ」とは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量から、森林などによる吸収量を差し引いた、実質ゼロを意味
※2:何かを生産したり、一連の人為的活動を行った際に排出される二酸化炭素と、吸収される二酸化炭素が同じ量であるという概念
※3:ZEH(ゼッチ)(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは、「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」のこと
※4:、大きく分けて次のような措置が講じられている住宅のこと。・長期に使用するための構造及び設備を有していること ・居住環境等への配慮を行っていること ・一定面積以上の住居面積を有していること ・維持保全の期間、方法を定めていること