親が所有する広い土地の一部に、子世帯用の新たな家を建てようとする場合、建築基準法には「一敷地一建物」の原則があるため、2つの住宅を建てることができません。そこで土地を「分割」もしくは「分筆」することとなります。
似たような名称ですが、この選択を間違えると後々、「しまった!」となるケースもありますので、その違いやメリット・デメリット・注意点を記したいと思います。
目次
土地の「分割」とは?
土地の分割とは、登記上は一つの土地のまま、設計者が任意のラインで敷地を分割したと仮定し、分割された敷地の一つは既存建物、もう一つに新築建物を建てる手法を言います。
分割の概要
- 土地の登記変更は必要なし
- それぞれの建物が建築基準法に適合していることが確認できれば、新築建築が可能になる
※注意!:新築建物はもちろんのこと、既存建物も分割した土地に対して適法になるかのチェック・行政指導を受ける(以下、デメリット参照) - 新築建物にて住宅ローンを利用する場合、担保となる土地は分割分ではなく、土地全体が設定される
分割のメリット
- 手間や時間、費用がかからない:隣地境界や道路境界などを隣地や役所と確認する必要がない
- インフラ設備の費用負担を軽減できる可能性あり:水道やガスなど、残地(親世帯)の水道メーターを分岐して利用することが可能
分割のデメリット
- 行政から残地(親世帯)の適法への指摘を受ける可能性あり:道路への接道長さや建蔽率、容積率等。実家が賃貸併用住宅の場合は、避難経路が確保できる分割方法が求められる
- 建築会社の選択肢が狭まる可能性あり:分割することで残地の家(親の家)が違反建築となる場合、子の新築を断る建築会社もある
分割がおススメの方
- 親の敷地が広い
- あまり費用はかけたくない
- 子の家の建築資金は、親の贈与や子の自己資金である
- 半年以内に子の家を建てたい
- 家族(法定相続人)間の関係性が悪い
- 隣地所有者と親の関係が悪い
土地の「分筆」とは?
土地の分筆とは、一つの土地を登記上、二つの土地に分けることです。
分筆の概要
- 分割とは異なり、まったく別の土地になるため、抵当権設定などは、あくまでも新築する土地に対してだけのものになる
- 土地所有者(親)だけでなく、隣地所有者や役所との境界確定およびその費用等も発生するため、お金も手間もかかる
分筆のメリット
- 残地に建つ建物(親の建物)の遵法性まで問われない:但し、法令順守の観点から建蔽率、容積率等は守るべき(既存建物が適法になる範囲での分筆が基本)※判断は行政により異なる
- 将来の遺産分割も安心:周辺の境界確定も完了し、登記上で分かれているため、将来の遺産分割も容易になる。また、住宅ローンを組む際も、分割した子の土地だけに抵当権を設定することができる
分筆のデメリット
- 時間と費用がかかる:隣地境界、道路境界の確定には、時間と多くの費用がかかる。また、隣地境界は相手次第で確定ができない場合もある
- インフラ整備の費用がかかる:子世帯は、水道やガスなどのインフラ設備を新たに引き込む必要がある
分筆がおススメの方
- 親の敷地が狭い
- 費用はかかっても構わない
- 子の家の建築資金は住宅ローンを利用する
- 1~2年以内に子の家を建てたい
- 家族(法定相続人)間の関係性がよい
- 隣地所有者と親の関係性が良好である
まとめ
親の土地の一部に子が家を建てる場合、手軽さや費用面から「分割」を選択する方が多いようです。
しかしながら分割の場合、「現状のままだと既存建物が違反建築になる」と指摘される場合もあります。そのことが原因で、計画中止や分割線の見直しによって計画延期を決断せざるを得なかったケースもあるようです。
分筆の場合、行政は新築建物(土地)のみに対して確認申請を審査するので、当然ですが他人の土地(親の土地)のことまで干渉はしません(行政により異なる)。
分筆は費用がかかるからと、安易に分割を選択するのはリスクがありそうです。上記「おススメ」を参考にしながら、ハウスメーカーの担当者にも相談し、間違いのない選択をしてください。