日本では住まいづくりにおいて地震対策は大切です。耐震性に優れた家を建てることはもちろんですが、居室空間の計画においても、あらかじめしっかりと地震対策を施すことが重要となります。
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揺れは想像以上の被害をもたらす。まずはどんな危険があるかを知ろう
これまで大きな揺れの地震を経験したことがない方は、あまり実感が持てないかも知れません。でも地震の揺れは、想像以上の被害をもたらします。筆者は阪神淡路大震災を経験しましたが、震源地から遠く離れていたにもかかわらず、あの重いトイレタンクの蓋が吹き飛んで床に転がりました。
建物自体は大きな揺れに耐えたとしても、実は室内には“凶器”になるものがたくさん存在するのです。たとえば、
- 家具→倒れてくる
- テレビや置物→倒れ落ち、飛んでくることも
- 扉や引き出し→家具の扉・引き出しが飛び出してくる
- 食器類→床に落ちて割れれば危険。足の踏み場もないことも
家具は突っ張り棒が基本。でも…
だからこそ、もしもの時の対策が大切となります。
- 家具→突っ張り棒などで転倒防止
- テレビや置物→固定できるものは固定し、なるべく高い位置には置かない
- 開き扉→耐震ラッチの活用
- 引き出し→ストッパーの活用
- 食器類→滑り止めシートの活用
これらをきちんと施しておくことで、家族の安全がある程度、担保されます。しかし、このような対策を講じたとしても、絶対に安心というわけにはいきません。
たとえば突っ張り棒ですが、大きな揺れは建物を“歪ませる”ため、揺れの最中に突っ張り部分に“隙間”が生じ、支えきれなくなる恐れもあります。それに、突っ張り棒だらけの室内は、決しておしゃれとは言えません。
また、ストッパーは、筆者も活用していますが、意外と外れやすいです。突っ張り棒と同じく、家具のせっかくのデザイン性を損なってしまいます。
解決策! 家具はできる限り「造り付け」にする
では、どうすればいいのか。もちろん以下を講ずれば、絶対に安心とは言い切れませんが、かなり安心感・安全性は増すはずです。
まず、家具は造り付けにすること。造り付け家具にすれば転倒の心配はありません。但し、当然ながら移動させることはできませんので、“ライフスタイルや生活動線をしっかりと考え、必要な場所に必要な収納量の造作家具を計画する”ことが肝要となります。
本棚や、最近では食器棚も見せる収納としてオープンタイプを選ぶ方が増えていますが、収めた物が飛び出さないように、扉はつけたほうがいいです。そしてその際は、引き出しも含め、必ず「耐震ラッチ」を設置しましょう。そうすることで、扉が開いて物が落ちたり、引き出しが飛び出てくるのを防ぐことができます。
「パントリー」を設け、防災グッズ・水・食料などを備蓄する
次に、限られた敷地面積であっても、できれば「パントリー(食品庫)」を設けましょう。パントリーがあれば、水などのストック品もしっかりと収納することができます。
災害時に必要な水は、1日あたり最低でも2リットルと言われています。それを家族分、そして生活用水も考えると、それなりの量をストックしておく必要があります(一般的には、3日分のストックをするべきと言われています)。
防災グッズなども取り出しやすいパントリーに置いておけば、安心感は増します。アルファ米などの備蓄食料もパントリーに整理しておけば、手軽に消費期限をチェックすることができます。
「家電製品を仕舞える収納」も計画する
キッチン周りには、電子レンジや炊飯器、コーヒーメーカーなど、多くの家電製品が集中します。最近では、これらによって生活感が出ないように、さっと仕舞える(隠す)収納を設ける方も増えていますが、これは地震対策の上でもたいへん有効です。
住まいを見渡して、「もし、これが落ちたり、飛んできてぶつかったらどうなるだろう」と想像してみてください。すべての物を固定するわけにはいきませんが、たとえば大型のテレビは壁付け固定することもできます。
まとめ
地震対策の基本は、
- 家具→突っ張り棒などで転倒防止
- テレビや置物→固定できるものは固定し、なるべく高い位置には置かない
- 扉や引き出し→ストッパーの活用
- 食器類→滑り止めシートの活用
そして、注文住宅を計画する際には、
- 造り付け家具にする
- パントリーを設ける
- 家電収納も設け、テレビも固定する
また、落ちて壊れたら困るもの、たとえばパソコンなどは収納場所を確保し、使用後は片づける癖をつけましょう。大きな地震はそこまで頻繁には起きませんが、予期せぬ時に起こります。日頃から防災への意識を高めておくことは、とても大事なことです。