【V2H】本格的なEV時代を迎えて知っておきたいV2Hの基礎知識

V2Hという言葉を見かける機会が増えてきました。これは「Vehicle to Home(ビーグル・ツー・ホーム)」の略で、日本語に訳すと「クルマから家へ」。電気自動車(EV・PHV)に貯めておいた電気を住宅側に取り込んで使用できるシステムのことを指します。電気自動車を蓄電池代わりに使用し、クルマでの移動にも、家庭での電気使用にも使える便利な仕組みです。

本格的なEV時代、エコ時代を迎える中、これからの家づくりにとって、このV2Hは大切な検討事項の一つとなりそうです。今回はV2Hの基礎知識とメリット、そしてデメリット・注意点を解説したいと思います。


V2Hは、V2H機器と電気自動車の2つで構成される

これまでEVやPHVへの充電は、ガレージに用意された100V/200Vのコンセントなどから行ってきました。しかし、それだと充電された電気はクルマでの移動のためでしか使用できません。V2Hなら、クルマ⇔家庭の双方向に電気のやり取りができるため、暮らしにさまざまなメリットをもたらします。

では、まずV2Hの基礎知識から。V2Hは主に2つの機器から構成されています。

  1. V2H機器/家庭の電気を電気自動車へ充電したり、逆に電気自動車に貯めておいた電気を家庭で使える電気に変換し、給電する装置
  2. V2H対応の電気自動車/蓄電池代わりになってくれるクルマ

ここで大切なポイントを一つ。V2Hには、「家庭用蓄電池」が付属している、もしくは家庭内に蓄電機能があると思っていた方もおられることでしょうが、それは間違い。住まい自体には、そのような機能は有しません。

よってV2Hを機能させるためには、V2Hに対応した電気自動車を購入する必要があります。クルマが無ければ、V2H仕様の住まいにする意味がまったくないことを理解しておきましょう。


V2Hのメリット・デメリット、注意点

では、V2Hのメリットを見ていきましょう。メリットは大きく4つあります。デメリットや注意点も記しますので、併せてお読みください。

電気自動車への高速充電が可能

家庭用200V充電スタンドと比べ、高速充電が可能で、充電時間を大幅に短縮できます。倍速充電機能を搭載している場合、およそ半分の時間でフル充電が可能となります。200V充電スタンドで8~10時間ほどかかるものが、4~5時間でフル充電になるのは大きなメリットです。

デメリット・注意点/ディーラーなどに設置されている急速充電スタンドほどは短くはなりません。

電気代を節約できる

電気料金の安い深夜電力で充電すれば、電気代の節約になります。クルマに充電した電気を日中に家庭で使用すれば、お得感が増すことでしょう。また、太陽光発電システムと組み合わせれば、さらに経済的メリットはアップ。これまで太陽光発電で生み出した余剰電力は電力会社に売電し、収益を得てきましたが、買取価格が下がる中、電気の「自産自省」はとても家計に優しいと言われています。

デメリット・注意点/日中、ご家族がクルマを頻繁に使用するという方にはメリットが薄くなります。蓄電池はクルマにくっついているわけですから、その際は電気を電力会社から買うことになります。

蓄電容量が大容量 → 万が一のときも比較的、安心

家庭用蓄電池の容量は、3~5kW/hほどの小さい容量のものから10~15kW/hほどの大容量のものまでありますが、20 kW/hを超える機種はありません。一方、V2H対応の電気自動車の蓄電容量は小さなものでも10 kW/h、大きなものでは62 kW/hもあります。容量が小さいと言われている人気のEV車「HONDA e」でも、35.5 kW/hもあり、家庭用蓄電池と比べると大きな差があるわけです。当然ながら、大容量のほど電気をため込むことができますから、万が一の災害による長時間停電の際にも、ゆとりを持って対応できる可能性が高まります。

デメリット・注意点/蓄電池は、充放電を繰り返すことで徐々に劣化が起きていきます。電気自動車をクルマとして使用するだけでなく、家庭用電源として使用すれば、当然、充放電回数は増え、劣化速度は早まります。クルマとしての寿命が、通常使用(走行のみ)よりも短くなりがちであることを理解しておきましょう。ちなみに電気自動車の蓄電残量が20~30%になるまで、できる限り使用してから充電したほうが長持ちすると言われています。

補助金を活用し、お得に導入することが可能

V2Hや電気自動車を購入するにあたっては、さまざまな補助金制度が用意されています。たとえば以下のようなものです。

  • 再エネ電力と電気自動車や燃料電池自動車等を活用したゼロカーボン ライフ・ワークスタイル先行導入モデル事業
  • クリーンエネルギー自動車導入事業費補助金(CEV補助金)
  • 災害時にも活用可能なクリーンエネルギー自動車導入事業費補助金

国の制度以外にも自治体独自に補助金制度を設けていることもありますし、太陽光発電システムなど、省エネ・エコ機器に補助金が出る場合もあります。数十万円の補助金が出ることもあり、とてもお得です。

デメリット・注意点/各制度で条件が異なりますので、導入時にはしっかりとチェックしましょう。


まとめ

いかがでしたか? V2Hを導入する住まいは、V2Hの機器、そしてV2Hに対応した電気自動車が必要となるため、その分、コストは上昇します。日々の生活において「クルマは必要ない」という方なら、家庭用蓄電池だけでことが足り、そのほうがコストは安くなります。容量が小さなものであれば数十万円で導入できます。

もちろん電気自動車並みの蓄電容量の家庭用蓄電池を導入するとなれば、コストはアップし、電気自動車の値段とそれほど変わらなくなります。一方、電気自動車は、V2H対応のものを選ぶ必要があるため、車種が限られるという悩ましい面もあります。

「V2H+電気自動車」がいいのか、「ガソリン車+家庭用蓄電池」がいいのかは意見が分かれるところですが、蓄電容量やこれからさらに求められるエコへの意識、万が一の時の安心感などを考えると、V2Hを選択する人は増えていくのではないでしょうか。