玄関収納の救世主「土間収納」。そもそも土間収納とは何かと言えば、簡単にイメージできるようにご説明すると“玄関のたたき部分の空間を広く取って、一部を収納部分として活用する”というもの(たたきと表現するのが正しいか、土間と言うべきかの専門用語の違いは、ここでは置いておいておきます)。つまりは、玄関脇に収納スペースを設けようという考え方です。
実は、この土間収納は、家づくりには欠かせない重要な空間なのです。今ではほとんどの家で採用されていますし、住宅展示場でも必ず提案されています。また、マンションでも採用されているほどです。20年前頃には、土間収納はほぼ採用されていませんでした。玄関収納と言えばいわゆる下駄箱だけ。しかし今では、用途や収納量に応じて土間収納やクロークルームなどがトレンドになっているのです。
編集部が、現在、土間収納を持つ方々に、その使い勝手をインタビューすると、「無かったと思ったらゾッとする」という声が大勢を占めました。土間収納をつくらなかった方はもちろん、「つくったけれど、あまり考えずに設計をして大後悔をした」という方もたくさんおられます。「適当に、だいたいの大きさでつくっておけばいいや」とか、「そんなものをつくるくらいなら居室を広くしたほうがマシだ」と考えている人は、家づくりの黄信号、いや赤信号が灯っているといっても過言ではありません。
そこで便利で使い勝手に優れた「土間収納をつくるときの5つのポイント」を用意しました。これを読めば、出かけるときや帰宅後がとても快適になり、無駄なストレスがなくなります。ぜひご自身がお持ちの荷物やライフスタイル、将来設計も頭に描きながら、5つのポイントと照らし合わせて計画を始めてみてください。
目次
3つのタイプの土間収納。同じ広さでも使い勝手はまったく違う
比較しやすいように、ここでは同じ広さの3つのタイプの間取りをご紹介します。
Aタイプ「2WAY便利動線」
2WAY便利動線は、その名の通り、玄関からも収納スペースからも室内に出入りすることができる動線が特徴のプランです。一旦、玄関に出てから収納に入って作業をする(帰宅時は逆)というワンクッションがなくなるため、特に朝などの忙しい時間帯に力を発揮してくれます。収納から室内にあがったすぐ脇に、手洗いを設けるケースもあります。
Bタイプ「収納力重視」
利用頻度はそんなに高くはないけれど、家の中に置いておくには少しかさばってしまう。そんな物を収納するのに便利なプランです。たとえばゴルフ道具やキャンプセットなどが代表的な例となります。
Cタイプ「きれいに整理整頓」
収納スペースとの間仕切りを引き違い戸にしたプラン。出し入れも楽ですし、デッドスペースが生まれにくく、しっかりと整理整頓できるのが特徴です。収納力はありながらも、玄関側をゆったりと利用できるのもうれしい点です。
土間収納がないと、いったいどこに置く? それが狭苦しくなる原因!
土間収納があると、以下のようなものが仕舞えます。どれもがかさばる物ばかりですし、外で使用するものを家の中に置きたくないのは当たり前です。でも、もし土間収納がなければ、これらを室内のどこかに置かなければなりません。それが暮らしを不便にしたり、狭苦しさを生む原因となるのです。土間収納の計画は、やはり欠かすことはできません。
- 買い置きの米や水など
- 宅配便で届いた荷物の仮置き
- ウォーターサーバーの重いボトル
- ベビーカー、子どもの自転車、空気入れなど
- アウトドア用品
- 工具、ガーデニングの道具
- 子どもが部活動で使う運動具
- ゴルフバック、旅行カバン(スーツケース)
- 長靴、ブーツ、コート
- 傘立て 等々
土間収納を賢くプランニングするための5つのポイント
では、これまでお伝えした基礎的な知識をもとに、土間収納を賢くプランニングするためのポイントを具体的にお伝えしていきましょう。ご自身のライフスタイルや家族構成などを考慮して、ぜひご家族にぴったりのプランを生み出してください。
ポイント1:広さ
いろいろ仕舞えて便利だからと言って、無計画につくると使い勝手が悪くなったり、デッドスペースが生まれてしまうこともあります。もちろんそれは、室内の広さを無駄に圧迫してしまうことにもつながります。 何を、どんなふうに仕舞うのかを、まずはしっかりと明確にしましょう。持っている荷物や靴の数、さらにはブーツのような高さのあるものなど、サイズもきちんと割り出して計画することをおススメします。少々面倒な作業ではありますが、ここで労を惜しまないこと! 適当にやると、必ず「入らない!」「こんなに広くは必要なかった!」ということになります。しっかりと調べて、置く荷物に見合った広さを決定しましょう。
ポイント2:ドア
狭い玄関でのドアの開け閉めは、そのたびに靴が邪魔になって、不便を感じることにもつながります。そんなときは“ドアを付けない”というのも選択肢のひとつ。つける場合なら、「大きな引き戸」が理想です。またロールカーテンやカーテンなどで目隠しするという方法もあります。狭い玄関の場合は、このほうが開閉時も出し入れの際も負担が少なくて快適です。
ポイント3:出入り口
収納スペースへの出入り口は、出来る限り大きく(大きなドア)しましょう。出入り口が狭いと、奥のものや大きなものを取り出しにくくなります。
ポイント4:棚
設計段階から棚を多めに用意することをおススメすると同時に、棚はぜひ可動式にしましょう。可動式なら、その後の荷物の変化に応じて高さを調整することができます。靴磨きの道具や工具などをはじめとする細かなものは、ホームセンターなどでカラーボックスを購入し、棚に置けば、容量も無駄なく便利に収納できます。
ポイント5:付けておくと便利な物
当然のことですが、収納は普段生活するところではありません。だから計画時に疎かになって、後で「あれを付けておけばよかった!」と思うことがよくあります。以下に“付けておくと便利なもの”を記しますので、ぜひ参考にしてください。
照明
玄関は薄暗いもの。玄関の照明だけでは土間収納すべてに光を届けることはできません。いつでも作業しやすいように、必ず付けましょう。「窓を用意すればいいのでは?」と言う方もおられますが、収納はものを頻繁に動かしません。窓から差し込んだ直射日光で大切なものが日焼けして変色してしまうこともあるということを、ぜひ理解しておきましょう。
コンセント
掃除機を使ったり、電動自転車のバッテリーを充電したり…。土間収納には、意外と電気を使用するものが置かれます。ぜひコンセントも用意しておきましょう。その際に気をつけたいのが位置。低い位置だと床が濡れている時などの漏電が怖いですので、ある程度、高い位置に設けてください。
換気扇
土間収納でカビ対策は重要です。ぜひ換気扇を付けましょう。窓の場合、断熱性能によっては結露して、逆に悪影響を及ぼすこともありますから、換気扇をおススメします。
ハンガーフックや物干しバー
ジャケットなど出かけるときにさっと羽織れる洋服や、濡れたコートや傘などを干すために、ハンガーフックや物干しバー(物干しスペース)を設けるのも便利です。可能であれば、濡れていいものとダメなもののスペースを区切るといいでしょう。
まとめ
土間収納が、快適生活のための必需品であることがお分かりいただけたでしょうか? まとめとしては
- 今の家は、どの家も土間収納を採用している
- 土間収納を採用せずに後悔した人がたくさんいる
- 広さが同じでも、タイプの違いで使い勝手が異なる
- 土間収納を賢くプランニングするためには、5つのポイントがある
家づくりは間取りやデザインに気持ちが行きがちですが、収納計画はとても重要です。このような細かなこだわり、工夫が満足の差となりますので、ぜひ実践してみてください。