以前に、「【土地探し】失敗しない、いい土地の見分け方、選び方のポイント」という記事をご紹介し、土地選びのコツをお伝えしました。今回は、さらに一歩進め、暮らしや防災面から見るいい土地の選び方を、神奈川県で不動産業を営むS社長に伺いました。プロならではの視点は、おおいに参考になることでしょう。
平日が閑静だからと言って、安心してはならない
編集部:以前、「はじめて家を建てる」にて、いい土地の見分け方をお伝えしました。この記事も不動産会社や建築会社の方々への取材をベースにまとめたものですが、長年、不動産を取り扱われているS社長から、何かさらにポイントやコツがあれば伝授していただけますでしょうか。
S社長:まず拝見した記事の中に「現場見学は、朝8時に行くべし!」というものがありますよね。そこにも「候補地が絞れたら、夜にもでかけて…」とありますが、付け加えるなら平日だけでなく、土・日にも出かけたほうがいいと思います。休日には休日なりの環境がありますからね。平日は閑静な場所でも、近くにイベント会場があって、休日は渋滞や騒音が気になるなんてことも無いわけではありません。
編集部:たしかに。以前、私が取材した、とあるサッカー場近辺の分譲地では、地元の人にお話しを聞くと試合開催日はクルマや人があふれかえって動けないとおっしゃっていました。
S社長:イベントの場合、数時間もすれば収まりますし、そこを良しとするか、やはり気になるのかはご本人次第ですけれど。平日と休日の環境の違いがあるとすれば、そこはきちんと把握しておいたほうがいいでしょうね。
道路との高低差は要チェック! 毎日の暮らしを想像しながら選ぶこと
編集部:周辺環境以外で、土地選びの際に気を付けるべきことはありますか?
S社長:私が土地を選ぶときやお客様にご案内する際によくお伝えするのは、「道路との高低差」です。道路から玄関まで階段を登らなければならない土地の場合、その階段の段数は要チェックですね。一般的に1mの高低差は5段。私の経験上、10段・2mが限界です。それ以上になると生活に影響が出ます。もちろん若いうちは平気でしょう。でも、毎日のことですし、歳を重ねるときつくなるのは目に見えています。
編集部:若くても小さなお子様がおられて抱っこしていたり、ベビーバギーを運ばないといけないとなるとしんどいですよね。重い買い物袋を持って上るのも億劫に感じるのではないでしょうか。
S社長:そうなんです。土地を見に行っているときは、たいてい手ぶらですから(笑)。10段以上あっても気にならない方も少なくないんですが、ぜひ日々の暮らしを想像しながら土地選びをして欲しいですね。
昔からその土地に暮らす人の家や神社仏閣をチェックしよう
編集部:最近は自然災害も多く、その点で何かアドバイスはありますでしょうか。
S社長:昨今は、やはり増水リスクですよね。テレビなどでは、毎年のように洪水被害を報道していますけれど、実際に同じ地域が毎年、洪水被害に遭うことは稀で、数十年に一回、被害に遭うか合わないかという土地のほうが圧倒的に多いわけです。
編集部:だから、ハザードマップなどを参考にはするものの、「まあ、堤防も高いし、大丈夫だろう」と思ってしまうのでしょうね。
S社長:増水リスクを心配する場合、その土地の“古い家”を見て回るといいですよ。古い家は、ずっと被害に遭うことなく建っている証拠ですから。その土地の地主の人の家は、やはりいい場所に建っているものなんです。
編集部:周囲よりちょっと高台とか、そういった場所に建っていると。
S社長:その通り。先人の知恵と言いますか、ご先祖の経験から生まれた防衛策なんでしょうね。以前に聞いたことがある話しなんですが、とある広大な分譲地に昔からそのエリアに住んでいた方が家を建てられる際、「お金がかかってもいいから地盤を1m高くしてくれ」と言われたそうです。そして数年後、水が来て、そのおうちだけは浸水被害に遭われなかったとか。
編集部:可能ならば、その土地に昔から住んでいる方にお話が聞けたらいいですね。
S社長:地元の神社仏閣も要チェックです。そういった信仰の場所やお墓などは、被害に遭わない場所に建てられているものなんです。お墓が流されたり、壊れたりするなんて嫌ですからね。そういった場所は増水リスクはもちろん、地震に強い地盤だったりするものなんです。
編集部:お寺や神社の隣とかなら、なんだか守られていそうで安心できそうです(笑)。でも、確かに長年にわたって建物が建ち続けている場所は、それだけリスクは低いということになりますね。
S社長:そういう点から考えると、地元密着型とか、老舗の不動産会社に相談するのもいいでしょう。地元ならではの情報を手にしやすいと思います。
編集部:今回も、たいへん参考になるご意見をいただきまして、ありがとうございました。
※記事内のアドバイスは個人的見解であり、増水・地震リスク軽減を保証するものではありません。