※画像提供:Tagle住まい
今、家づくりの検討を始めると、必ずや出会うキーワードがあります。それは「ZEH(ゼッチ)」。ZEHとは、「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略で、その内容をご説明すると、家の断熱性能をアップさせ、省エネ設備で電力消費を抑えながら、さらに太陽光発電などでエネルギーを創ることにより、“年間の一次消費エネルギー量(※)の収支をプラスマイナス「ゼロ」にする住宅”というものです。ZEHをより簡単に言い表しますと、
エネルギーを自給自足することができる家
となります。
「なんだか難しそうだなあ」と感じた方も少なくないかも知れません。でも、それでZEHから避けてしまうと「大きな損をした!」ということにもなりかねません。なぜならZEHは、光熱費がセロになる、または大幅に削減できますし、なんと
国から補助金が70万円ももらえる
からです。
「でも、いろんな設備機器にお金がかかって大変なんでしょう?」という方に、ここではZEHのイロハ、疑問の解消、さらには補助金の貰い方を詳しく解説していきます。ZEHは国が普及を推し進めるこれからの家づくりですから、建てて数年後に「うちもZEHにしておけばよかった!」と後悔することにもなりかねません。ぜひご一読いただき、ZEHを賢く検討してください。
※一次消費エネルギー量:住宅で用いる冷暖房や換気、給湯、照明などの設備機器のエネルギーを熱量換算した合計の値のこと
目次
今、なぜZEH化が叫ばれ、必要とされているのか
日本は元来、資源が少なく、エネルギーの海外依存率がとても高い国です。そんな背景から「省エネ」への意識は比較的高く、日々の暮らしの中でも「節電・節約しましょう」などという言葉があたり前のように交わされます。
しかし、私たちの暮らしがより便利に、豊かになるにつれ、家庭の電力消費量は増加しているのです。その一方で東日本大震災を契機に原子力発電所の稼働が止まり、電力需給が逼迫する事態も起こり始めています。そこで家庭におけるエネルギーの需給構造を根本的に改善し、エネルギー消費量の大幅な削減を目的とした施策が「ZEHの普及」というわけです。
国は「エネルギー基本計画」(2014年4月閣議決定)において、「住宅については、2020年までに標準的な新築住宅で、2030年までに新築住宅の平均で、住宅の年間の一次エネルギー消費量が正味(ネット)でゼロとなる住宅(ZEH)の実現を目指す」とする政策目標を設定しました。それを受け、経済産業省では、2020年までに新築一戸建ての過半数でZEHを実現することを目標に、課題と対策を整理した「ZEHロードマップ」を策定。これをベースに、普及に向けた取り組みを行っています。
要するに、これから建てられる家は、ZEHが主流となるということ。もちろんZEHに対応していない家を建てることもできますが、この機会に「お金さえ払えば電気は買えるもの」という発想から、「自分たちの分は、自分たちで賄う」という意識に変えてみてはいかがでしょう。
ZEHにするための仕様設備とは
ZEH仕様の家にするためには、「断熱」「省エネ」「創エネ」の3つの基準を満たす必要があります。それぞれに一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)が定める厳密な規定がありますが、それをお伝えしても専門的過ぎますので割愛します。以下に基本的な考え方を示します。
断熱
断熱性能はUA値という指標で表し、地域によって異なりますが、0.4~0.6以下をクリアしなくてはなりません。
そのため、建物の躯体(床、壁、屋根、窓等の外部に接する部位)を高断熱化する必要があり、断熱材を厚くしたり、高性能サッシを使用するなどして対応します。
省エネ
「空調」「照明」「給湯」「換気」がエネルギー消費の大きいもの。この4項目で省エネ効果の高い設備やアイテムを導入することで、一次エネルギー消費量を20%以上削減することが求められます。
創エネ
太陽光発電システムなどの再生可能エネルギーシステムを導入し、家庭用燃料電池や蓄電池などを組み合わせることで、エネルギーを自ら創る家が条件となります。
ZEH仕様の家にすることのメリットとデメリット
では実際に、ZEHにはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。以下にそれらを記しますが、明確に言えるのは「メリットのほうがはるかに多い」ということです。
メリット1.地球環境にやさしい
再生可能エネルギーによる創エネ、そして省エネ機器によるエネルギーの節約。それらはCO2削減にもつながり、地球温暖化対策への一助ともなります。それぞれの家庭が発電所となることで、温室効果ガスを大量発生する火力発電所の稼働も抑えられるのです。地球環境といえばあまりにも大きな話しで、自分には関係ないと思うかもしれませんが、あなたの子ども、そして孫の代に大きな影響を与える大切なこと。次の世代のためにもZEH仕様は重要です。
メリット2.ランニングコストが抑えられる
冒頭でお伝えしましたが、ZEHは、“年間の一次消費エネルギー量の収支をプラスマイナス「ゼロ」にする住宅”です。ですから簡単に言えば、光熱費がかからないということ。もちろん水道やガス、ガスなどの料金があり、ゼロにならないご家庭もあるでしょうが、少なくとも電気代はかなり抑えられます。暮らしのランニングコストを大幅に削減できるのです。
メリット3.健康的な暮らしが手にできる
ZEHは高断熱仕様の家です。つまり、これまでの一般的な住宅と比べ、部屋ごとの温度差が小さくなります。冬に暖かなリビングで快適に過ごしていて、廊下やトイレなどに行った瞬間、ぶるっと寒気が走ることがあります。これはヒートショックと呼ばれるもので身体にはよくなく、失神や心筋梗塞、脳梗塞を誘引するとも言われています。特にお年寄りは、ヒートショックの影響を大きく受けがちです。ZEHは、そんな健康面にもプラスとなる家なのです。
メリット4.災害時にも威力を発揮する
ZEH仕様の中での必須項目ではありませんが、「創エネ」を進める中で蓄電池を採用するケースがあります。この蓄電池により、自ら発電した電気の使わなかった分を貯め、夜などに使用することが可能となるのです。また、災害対策としても大きな効果を発揮。地震などで停電が長引いたとしても、数日分は問題なく生活ができるなど、万一への備えにもなり、安心です。
メリット5.資産価値の高い家になる
2016年4月から、建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)が施行されました。これは建物のエネルギー性能を評価するものです。最低の★1つから最高★5つの評価となり、ZEHは★4~5を獲得することができます。今後、ZEHならびにBELSが普及するにつれ、たとえ同じ予算で建てた家でも、ZEHではないBELSが低い家は、資産価値を低く見積もられる可能性が高くなるとみられています。家を資産として考えたとき、ZEHは有利となるのです。
メリット6.補助金が受け取れる
ZEHは補助金が受け取れます。また蓄電池の設置に対しても追加で補助金を受けることも可能となります。その補助金の申請などについては、この後に詳しくお伝えします。
唯一のデメリット
ZEH仕様にするためには、「断熱」「省エネ」「創エネ」の3つの基準を満たす必要があり、そのための設備機器などを導入しなければなりません。そうなるとどうしてもコストがアップしてしまいます。どれだけコストが上がるかは、どのような性能を求めるかによって違いますが、ZEH達成の下限ラインでおおよそ100万円~150万円と言われています。確かに安くはない金額ですが、補助金を上手く利用すれば負担も少なくなりますので、デメリットに映るかも知れませんが、検討の価値は大いにありです。
ハウスメーカーなら、逆にコストが抑えられることも
先ほど、コストがかさむことがデメリットだとお伝えしました。コストが上がることは間違いありませんが、ハウスメーカーの場合、その上がり幅が小さくなることもあり得ます。
というのも多くのハウスメーカーでは、標準で高性能の断熱材や高断熱サッシを採用していて、
標準仕様でZEHに必要な断熱基準に対応しています。
そのため、換気・空調、照明、給湯の省エネアイテムや太陽光発電パネルなど、わずかなアイテム変更・追加のみで、ZEHに対応することができるのです。ZEHの暮らしを通じ、省エネで節約した電気代で初期コストの十分な回収が期待できます。
ZEHの家は、認定ビルダー・ハウスメーカーにお願いしよう
ZEH仕様の住宅の認定を受けるためには、ZEH認定ビルダーを通して申請しなければなりません。一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)に登録されたZEHビルダーが設計、建築または販売を行う住宅であることが大前提となるのです。
【SIIに登録されたZEHビルダー一覧】
https://sii.or.jp/zeh29/builder/search
上記、サイトで検索し、ご自身が検討する住宅会社がZEH認定ビルダーであるかどうかを確認しましょう。ちなみに大手のハウスメーカーは認定されています。申請に関しては複雑な手続きとなりますので、住宅会社に任せるといいでしょう。
ZEHの補助金について(平成30年度の制度)詳細を知ろう
ZEH住宅の補助金を受けるためには、ZEH認定基準をクリアしたうえで、定められた期間内に申請を行わなければなりません。では、その詳細について記します。
補助金70万円! さらにその他の補助金制度もあり
平成30年度(2018年度)では、ZEHの要件を満たすと70万円の補助金を手にすることができます。さらに省エネ効果の高い素材や建材、先進的な再生エネルギー熱利用技術を導入する場合は、追加で20万円の補助金を、蓄電システムを導入する場合は、工事費5万円、1kWあたり3万円(上限30万円)を受け取ることができます。詳しくは住宅会社の担当者に相談しましょう。
申請数と採択件数の差は1%未満。ほぼ申請は通る
実は平成30年度(2018年度)の詳しい公募要件は、まだ発表されていません。今分かっているのは、
1.ZEH補助金は平成30年度から31年度まで
2.低炭素住宅と蓄電池の補助金は平成30年度から平成34年度まで
ということだけ。前例から今年度も公募制となることが予想されます。
平成28 年度の実績では、申請数と採択件数の差は1%未満です。ZEH認定ビルダーを通じて申請すれば、ほぼ確実に補助金を受給することができます。申請が多すぎる場合は、省エネや創エネ率の大きなZEHスペックの高い家から順に採択されます。
まとめ
- これからの家は、ZEH仕様が主流になる
- ZEHにすることのメリットは多い
- 平成30年度は、70万円の補助金が受け取れる
快適に暮らせ、家計にも地球環境にもやさしく、資産価値の高い家。それがZEHです。補助金が設定されている今だからこそ、積極的にZEHの検討を進めてみてください。