家族がもっと仲良くなる、キッチンのつくりかた

家族のキッチン

ライフスタイルや家族関係の変化に伴って、キッチンの形も大きく変わってきています。今、主流はオープンスタイルのキッチン。家族みんなで作業がしやすいプランが人気です。リビングやダイニングとの境もあいまいになってきました。家族が仲良く料理をしたり、後片付けをしたり。コミュニケーションが豊かになるキッチンプランについて、ハウスメーカーの担当者にお話を伺いました。

住友林業 渡辺 純治さん
一戸建てから賃貸まで、住宅商品全般の企画業務に携わる

三井ホーム 高見 明博さん
営業や設計業務を経て、現在は注文住宅商品の企画に携わる


キッチンは、舞台裏から家の中心へ

以前は“主婦の城”として“奥さん”が立つ場所だったキッチン。共働き世帯の増加や食育意識の高まりなどを背景に、最近のキッチンは夫婦や親子で一緒に作業できるスタイルが主流になってきています。一昔前までは、ダイニングと壁で隔てられていましたが、今はLDKが一体となったプランがごく普通に見られるようになりました。

(左)一昔前まで主流だった対面式キッチン (右)LDK一体型のオープンスタイルキッチン

「共働きの場合、夫も妻もキッチンに立ち、短時間で料理や片付けを済ませる必要があります。小さい子どもがいたら、さらに忙しいですね。子どもの面倒を見ながら他の家事もこなし…と、同時進行でさまざまな作業をしなくてはいけません。やはり、独立したキッチンよりもLDKが一体となったオープンスタイルの方が、動線上も効率的です」と、三井ホームの高見さん。以前、人気の高かった対面式キッチンの場合、ダイニングやリビングに目は届きますが、壁に隔てられていた分、距離がありました。オープンスタイルのキッチンは、壁や吊戸棚など遮るものがなく、動線もスムーズなのが特徴です。

最近は食の安全への意識が高まり、また家族の時間を大事にしたいという思いから、家で食事をつくろうと考える人が増えているようです。親が料理をしている姿が身近にあれば、子どもも自然に興味をもち、キッチンに立ちたくなるはず。食育の観点からも、小さい頃から料理に関心をもつのは望ましいことですね。妻だけでなく、夫も子どももキッチンに立つことで、家族の会話が増え、食を通じたしつけや情操教育にもつながっていくでしょう。

「実は、オープンスタイルのキッチンが普及した背景には“換気扇の進化”があります」と、住友林業の渡辺さん。「昔のプロペラファン式換気扇は、壁から直接排気しなくてはならず、プラン上の制約がありました。今は換気扇のしくみも大きく進化し、自由なレイアウトが可能に。このことが、キッチンスタイルの変化に貢献していると思います」。換気扇が進化して、ニオイや油煙の問題もクリアできるようになってきた今、キッチンが舞台裏から家の中心に進出してきた――そんな背景もあるのですね。


家族がもっと仲良くなるキッチン“4つのポイント”

家族みんなで作業がしやすく、コミュニケーションが深まるキッチン。そのプランニングのポイントをまとめました。

1. 物理的・心理的な距離を小さく

キッチンと、ダイニングやリビングとの距離を縮める。具体的には、キッチンとダイニングを隔てる壁や、カウンター上の吊戸棚をなくすなど。「動線が短くなったり、視線が通りやすくなることで、心理的な距離も縮まり、キッチンに入りやすくなります」(高見さん)。また、子どもも作業しやすい高さのカウンターを設けて、配膳や後片付けに参加しやすくするなどの工夫もいいでしょう。

キッチンカウンターとダイニングテーブルをくっつけたスタイルも、動線が短く配膳や後片付けが便利です

2. ぐるりと回遊できる動線

動線が行き止まらず、カウンター周りをぐるりと回遊できるプランは、家族みんなで立ちやすい。妻の邪魔になるから…と遠慮していた夫も、こんなキッチンなら積極的に立ちたくなるかも?「食器棚との間の通路部分は、90cmから100cmくらいが適当。このくらい余裕があると、すれ違いやすく、作業が滞りません。逆に、広すぎると食器棚との距離ができてしまい、効率が下がるので要注意です」(渡辺さん)。

キッチンカウンターの周りをぐるりと回れるプラン(水色の動線)。 キッチンの裏にパントリー(食品庫)とサブクローゼットを設けて、さらに便利に

3. 家族みんなが把握できる収納計画

オープンスタイルのキッチンは、ダイニングやリビングからも丸見え。モノがあふれて見映えが悪くならないよう、収納計画をしっかり。どこに何が入っているか、家族みんなが把握していることも大切です。誰もが片付け場所を把握することで「ママ、これどこにしまうの?」「ママ、あれはどこにあるの?」というやりとりもなくなり、妻の負担が軽減します。なお、飾っておきたいお気に入りの食器などと、隠しておくモノとのメリハリをつけるのもいいですね。また、ストック品や週末のまとめ買い用に、キッチンの近くにパントリー(食品庫)を設けることをオススメします。

4. 便利な設備や時短家電の導入

たとえばIHクッキングヒーターは、直火がない分、小さな子どもに手伝いをさせやすいという声も。高性能なオーブンは、短時間で同時に複数のおかずをつくれます。また、食器洗浄乾燥機は時短家電の筆頭。ライフスタイルに合わせて便利な家電製品を採用し、余った時間で家族のコミュニケーションを深めましょう。

LDKの近くに庭やテラスをつくるのもオススメ。 家庭菜園でつくった野菜や果物を、食卓に並べましょう


ポイント!こんな見方をしてみよう

  • キッチンを、家族が集まる家の中心として考えてみる
  • 誰もが立ちやすい、作業しやすいキッチンプランにする
  • 一緒にキッチンに立つ時間を家族のコミュニケーションに
  • 計画的な収納や時短家電の導入で、家事効率をアップする