【輸入住宅・オープンプランニング】間取り計画に必要な北米住宅の思想

輸入住宅に憧れを抱く人の中には、海外の暮らしに見る「広々としたLDK」に魅力を感じる方が少なくありません。北米住宅には、「オープンプランニング」という設計思想があり、それが広々としたLDK、そして豊かな暮らしを生み出す要因となっています。今回は、このオープンプランニングについて解説したいと思います。


単に広い空間をつくればいいのではない。そこには確かな理論がある

彼らは、「リビングルームやダイニングルーム、キッチンなどのパブリックスペースは、区画ごとに閉鎖させる必要はなく、空間を連続させればそれだけ豊かさが増す」という考え方をします。連続空間にすれば空間の容量が大きくなり、住環境がよくなるという発想です。この空間演出技法を「オープンプランニング」といいます。

では、オープンプランニングというものは、「単に広い空間をつくればいい」のかといえば、そうではありません。そこには、しっかりとした理論が存在するのです。それを理解しておかないと、「ただ広いだけの空間」になってしまい、豊かさ、おしゃれさとはかけ離れた輸入住宅となってしまいます。

では、北米住宅に見るオープンプランニングとは、どんなものなのでしょうか。少し難しい話になりますが、それは、

玄関ホール、応接室、書斎、正食堂という、お客様もお招きするフォーマルな公室(社会生活空間)と、勝手口、居間、食堂、台所という、家族が使用するインフォーマルな公室(非社会的生活空間)とのそれぞれを、間仕切りを設けない1空間として設計する技法です。さらにこれらの空間には吹き抜けがあり、天井の高さを感じさせない伸びやかな空間とする場合が多いようです。


自己を主張し、尊重し合える空間。それがオープンプランニング

北米においても、その昔は、個人の寝室、子ども部屋などの私室と対等な関係で、リビングルームやダイニングルーム、キッチンなどの公室(共用の部屋)が並列的に計画されていました。しかし、公室系列をアトリウム(家族の生活の広場)として設計したオープンプランニングによって、住宅内での家族の社会的生活と私的生活との間にメリハリが生み出されたのです。

つまり、住宅内を下着姿で行き来する日常空間だけにするのではなく、寝室では下着姿でいても、居間では家族の社会生活の場として個人の立場を尊重し合った家庭着を着て、家族相互に自己を主張し、お互いがその人を尊重し合える空間に昇華させたわけです。


高級な住宅、上質な暮らしは、豪華な建材が生み出すのではない

輸入住宅と聞けば、おしゃれで高級な住宅、上質な暮らしというものを想像するでしょう。しかし、それらは使用する建材が豪華であるから生まれるというものではありません。

たとえば来客中に、家族がフォーマルな公室の一部として計画されているトイレしか使用できなかったり、玄関からトイレの使用や入浴がうかがわれる住宅は、どれだけ豪華な材料や家具が使われていても、決して高級・上質にはなり得ないのです。

公室にオープンプランニングの技法を採用するということは、単に空間として公室系列が連続しているということではなく、“公室空間を住宅内における社会的生活を営むために必要な空間として設計すること”なのです。


家族であっても視線を受けない間取り、設備の計画が大切

オープンプランニングの導入によって、北米住宅は公室空間をよりいっそう社会的にし、私室空間をよりいっそう私的に生活享受できるようになりました。

たとえば主寝室は夫婦の私的な生活を完結できるように、バス、トイレ、化粧空間、クローゼットを持つことが前提となっています。

夫婦が公室空間を通り抜け、公室空間からの視線を受けなければバスやトイレにいけない生活は、夫婦にとって貧しい生活であるとの認識が、北米の暮らしでは広がっているのです。


まとめ

少し難しかったかも知れませんが、オープンプランニングという設計思想を理解しておけば、これからあなたがカタチにする輸入住宅は、きっと素敵なものになるでしょう。

住まいの中に家族共用の浴室が1か所、共用のトイレが1か所あり、家族がバスタオルを腰に巻いたまま寝室まで行き来したり、肌着姿で家の中を徘徊してもよいと考えるライフスタイルと、家庭内であっても家族の私的な生活と社会的生活は区別すべきと考えるライフスタイルとでは、当然、住宅計画のあり方は違ってきます。

後者を選ぶ方は、ぜひオープンプランニングを検討してみてください。