【平屋の間取り】プロが実践!プランニングのポイント3つを解説

平屋の外観デザイン

今、平屋が注目を集めています。規制緩和によるロフトの増床や、将来の家族構成の変化による部屋のもてあまし、それに伴う減築懸念などの観点から、需要が高まっているようです。

しかしながら、平屋を建てようと決めたものの、どんな間取りがいいのか分からず、「失敗しないか不安だ」という人は少なくないはずです。

家は、ほとんどの方にとって「一生に一度」の大きな買い物ですから、そんな不安を抱くのも当たり前。建てた後に「失敗した!」と思っても、後の祭りです。
そこで、いろんな間取りを見て参考にしようと思うのですが、ここで一つ落とし穴が!

いろんな間取りを参考にすることは間違いではありませんが、大事なのは、“その間取りが自分たち家族にとって理想的なのかどうかを判断できる眼を持つ”ことです。それさえあれば、間取りの善し悪しが分かり、さらに自分で失敗のない理想の間取りをつくることができます。この記事では、それらを実現する実践法を伝授していきます。

なぜ理想の間取りがつくれるようになるかというと、以下に示す間取りづくりの手順は、住宅会社の営業やプランナーが行う手法で、多くのお客様の理想や満足を形にしてきたやり方だからです。

プロが実践している間取りづくり手順は次のようになります。

  1. ヒアリング(要望の整理)
  2. ゾーニング(大まかな配置)
  3. プランニング(間取り設計)

この記事では、誰もが実践できるように、モデル家族・鳥谷邸の事例を示しながら平屋の間取りが完成するまでの手順を詳しく解説します。さらには「モデル家族・鳥谷邸のプラン例」もお伝えします。

これを行うことで、これまで「何となくいい間取りかな」というあいまいなレベルから、「この間取りはとてもいい!」と確信が持てる判断基準を持つことができます。そうなれば今後、ハウスメーカーや工務店との打ち合わせはスムーズに進むでしょうし、家族からの評価も高まること受けあいです。


1.ヒアリング(要望の整理):自分の事を知らない人に任せるの?自らを知るヒアリングシートが重要

平屋の間取りに限らず、どんな間取りを考えるにも、まず行わなければならないことは、「自分自身(家族)の棚卸(自身を見返し整理する)」です。新しく建てる家に対して、どんな要望があり、こだわりがあるのか。または、今までの生活をどのように受け継いでいくのか、といったことをきちんと理解、整理・整頓しておかなければ、実際に完成し、暮らし始めると「こんなに住み心地が悪くなるとは思わなかった」という後悔に包まれます。

住宅会社の営業やプランナーは、当然ながらあなたのことを最初はまったく知りません。知らないのに何も聞かれず、敷地形状に合わせたありきたりの間取り・プランを示されたなら、あなたはどう思うでしょうか。

間取り・プランは、住まう人、ご家族一人ひとりのこだわりや要望、憧れの生活などを聞いて、初めて作成に取り掛かれるもの。だから住宅会社の営業やプランナーは、まず、お客様のことを知ろうとするのです。

そこで、彼らが実際に利用しているヒアリングシートをカスタマイズした「はじめて家を建てる版・家づくりヒアリングシート」を用意しました。それを利用しながら書き方を解説しますので、ご自身や家族の棚卸しをしてみてください。

シートの書き方 → 「家づくりヒアリングシート」を利用して、家族の思いを書き出そう
シートの雛形DL → はじめて家を建てる版・家づくりヒアリングシート
シートの記入例DL → モデル家族・鳥谷邸のヒアリングシート


2.ゾーニング(大まかな配置): 自分たちに最適な平屋の間取りをつくるための注意点と手順

ここでは、「モデル家族・鳥谷邸のヒアリングシート」をご参照ください。それらに書かれた要望などを照らし合わせながら、平屋のゾーニングを説明していきます。

シートの記入例DL → モデル家族・鳥谷邸のヒアリングシート

ゾーニングの考え方と4つの注意点

事例をお話しする前に、ゾーニングの基本をお伝えしましょう。
ゾーニングとは、「住宅の間取りをはじめとする建築計画において、部屋や区画をまとめて計画していく作業」を指します。ちょっと難しいので、とても簡単にいうと、

敷地の中にざっくりとした各部屋の配置を描くことです。

ここで注意すべきは、いきなり部屋の配置を決めるのではなく、その前にいくつか重要な注意点をチェックすることです。敷地が持つ特性を理解したうえで、それを最大限に活かすことが家づくりの成功の第一歩となります。

注意点1.アプローチ

家を建てることの出来る敷地は必ず、公道(道路)と接しています(接道)ので、人も車もそこを通って敷地へアプローチ(出入り)します。そのため、まずは道路との関係から玄関や駐車場の位置を決めることが先決となります。

注意点2.日当たり

東に朝日が昇り、南に回り、西に太陽が下りていく。これは日本に住む人の常識で、当然、南側は自然光が入りやすくなります。でも、家づくりにおいてはそれだけではなく、もう少し光のことを考えましょう。 朝と昼、夕方の日差しには強弱があり、季節によって日の高さも異なります。北側は日が入らないと思う方が多いですが、光量が一定していて心が落ち着く空間をつくるのに適しています。画家のアトリエは北向きが多いのもその理由。また、トップライト(天窓)から自然光を取り込むことも可能です。どの部屋に、どんな光が入るのかを考えながら、ゾーニングしてください。

注意点3.隣接地の状況・周辺環境

隣地や周辺の建物からの視線や音をしっかりと把握しましょう。隣地に建つ住まいの窓の位置は、とても重要な要素。そこと自宅の窓が重なれば、ほとんど窓やカーテンを閉じて暮らすことにもなりかねません。 車の通りの多さ、その時間帯もチェックすることをおススメします。また、幼稚園や小学校、消防署の近くは、音が気になる時間帯があるかも知れません。一方、緑豊かな公園が近くにあるならば、そこを借景として活用することも期待できます。

注意点4.要望に添って部屋を配置

1~3を念頭に置いて、いよいよ部屋の配置です。ヒアリングシートにて、新しい我が家に必要な部屋や動線などのご家族の要望が判明していますので、それに沿っておおまかな配置を描いていきましょう。

モデル家族・鳥谷さんが行ったゾーニングの4つの手順

ゾーニング事例

手順1.アプローチ

接道は東側と北側に6mの広めの公道がある。
玄関位置としては東西南北のいずれも可能であるが、人通りが比較的少ない東側の道路からのアプローチを最初の案とした。その場合、2台の駐車スペースは東側と南側が考えられるが、まずは南に駐車スペースを含めて庭を確保する正攻法で進める。

手順2.日当たり

南は2階建ての住宅だが、駐車スペースも含めて南北に3mほどの庭をつくれば1階部分も日当たりは確保できるので、南にリビング、テラス、居室を並べられそうである。

手順3.隣接地の状況・周辺環境

西側は隣家のリビングや庭なので、窓も少なく閉じる設計とすることに。残念ながら、この土地は借景が出来るような環境ではない。

手順4.部屋の配置

1~3を考慮して、建物は敷地の北と西に寄せて配置する。

ここで大切なのは、 家づくりの「テーマ」を常に頭の中心に置いて、ゾーニングを行うこと。
鳥谷邸では「子どもとの時間、友だちとの時間、そして日常(料理や家事)を楽しく過ごせる家」としました。

  • 玄関:東からのアプローチなので東側に
  • LD:奥様とお子さんが日常を快適に過ごすために、日当たりの良い東南に
  • キッチン:LDとのつながりで北側に配置
  • 水回り:奥様が多くの時間を過ごすDKとのつながりを考え、キッチン横に
  • テラス:リビングとつながり、かつ気持ちのいい南側
  • 和室:家事、子どもの遊び場、奥様の母が泊まれるなど多目的に使えるようLDの横にレイアウト
  • 寝室:西側の南面に
  • 子ども部屋:出来れば2人分(2部屋)を考慮しつつ、落ち着ける北西に

このような手順で部屋をざっくりと配置していきます。


3.プランニング(間取り設計):モデル家族の平屋の間取りを、分かりやすく解説!

鳥谷さんが、ヒアリングシートから導き出したゾーニングをもとに、具体的にどのように間取りを完成していったのかを解説します。

モデル家族「鳥谷邸」の概要
【家族構成】
・施主本人:35歳(男性) 旅行代理店勤務 趣味:ゴルフ、温泉
・配偶者:32歳(女性) 事務職(休職中)趣味:料理、旅行
・子ども:5歳(男性)趣味:何かスポーツをさせたい
【テーマ(コンセプト)】
『子どもとの時間、友だちとの時間、そして日常(料理や家事)を楽しく過ごせる家』
詳細はこちらから → モデル家族・鳥谷邸のヒアリングシート

「モデル家族・鳥谷邸」平屋の間取り【A案】

鳥谷邸平屋の間取りA案

【鳥谷さんの想い・アイデア(A)】

  • LDKは敢えて南北を横断する配置として、家族の交流が自然に生まれる動線にしました。
  • その結果、廊下が少なく、各居室、水まわりへの動線もシンプルになりました。
  • 和室は子どもの遊び場、妻の家事、来客時の寝室など、日常的かつ多目的に使えるようにリビングとつなげています。さらにテラスともつながり、リビング~和室~テラスの3つのシーンでくつろぐことができます。
  • 書斎は当初、簡単な机程度の希望でしたが、キッチン横に3畳の小部屋をつくり、私、妻、そして子どもも低学年くらいまではここで勉強できるような場所にすることにしました。
  • リビングの天井は、LDの上に設けた大きなロフトとつながる勾配天井となっていて、ゲストが大勢で集まった時でも、伸びやかに過ごせます。
  • 収納は、大きなロフトの集中収納以外に、随所に適材適所の収納を設けています。

「モデル家族・鳥谷邸」平屋の間取り【B案】

鳥谷邸平屋の間取りB案

【鳥谷さんの想い・アイデア(B)】

  • 玄関、LDK、寝室の配置は、ゾーニングで描いた形を採用しました。
  • 建築面積の制約から、A案では2人目のための子ども部屋が確保出来なかったため、大胆な手法ですが、水回りと和室を入れ替えて、将来的に和室を子ども部屋にリフォームする案としています。
  • その結果、テラスと洗面がつながり、洗濯物を干すのが楽になるなど、妻の家事にとってはとてもハッピーな間取りとなりました。
  • 書斎は当初、簡単な机程度の希望でしたが、キッチン横に3畳の小部屋をつくり、私、妻、そして子どもも低学年くらいまではここで勉強できるような場所にすることにしました。
  • リビングの天井は、LDの上に設けた大きなロフトとつながる勾配天井となっていて、ゲストが大勢で集まった時でも、伸びやかに過ごせます。
  • 収納は、大きなロフトの集中収納以外に、随所に適材適所の収納を設けています。

なかなか考え抜かれた、素敵な間取りが完成したようです。ここまでくれば、ある程度、おおまかな部分があっても大満足の間取りが完成したのも同然です。あとはこの間取りを持参して、あなたのよきパートナーである家づくりのプロに相談すればいいのです。そうすれば、さらに間取りはブラッシュアップされていくでしょう。

重要なのは、「一旦、自分たち家族の思いを、間取りと言う形にしてみること」です。それができれば、前述のようにプロと相談しながらの手直しも効率的にできるでしょうし、「ああしておけばよかった」という後悔もなくなります。


まとめ

モデル家族の鳥谷邸の事例を参考にしながら、ぜひ、「理想の間取りをつくる実践法」を試してください。そうすれば、あなたは失敗しない家づくりにぐっと近づきます。 まとめとしては、

■間取りづくりには、きちんとした手順がある。

  1. ヒアリング(要望の整理)
  2. ゾーニング(大まかな配置)
  3. プランニング(間取り設計)

■ヒアリングシートを活用し、家族一人ひとりのこだわりや要望、憧れを洗い出す。

■家づくりの「テーマ」を常に頭の中心に置いて、部屋の配置を行うこと。

ヒアリングシートを活用し、家族にとって必要な部屋や動線に優先順位がつけられたことでゾーニングに指標ができ、家づくりのプロでなくても簡単に最適な間取りが作成することができるようになる。それができるということは、間取りの善し悪しが分かる眼を養う