省エネと聞けば、真っ先に太陽光発電を思い浮かべる人も少なくないでしょう。しかし、省エネに活用できるものは“空”だけでなく、なんと“地中”にもあるのです。今回は、「地中熱」に注目し、その基礎知識をお伝えしたいと思います。
夏は20℃も低く、冬は10℃も暖かい
地中は気中に比べ、年間の温度差が少ないことをご存じでしょうか。鍾乳洞などの洞窟に行けば、真夏でもひんやりとしている経験は、誰でも一度は体感したことがあると思います。特に10m以深は、ほぼ一定の温度です。東京では平均17℃程度。つまり、
〇夏(外気温が35℃の場合)…地下10mでは17℃=20℃近く地中のほうが冷たい
〇冬(外気温が5℃の場合)…地下10mでは17℃=10℃以上も地中のほうが暖かい
気中と地中の温度差を利用する「地中熱利用」で省エネに
このように夏場や冬場の地中の温度差を利用するのが「地中熱利用」です。では、どうやって利用するのか。利用の仕方はさまざまありますが、代表的なものが「エアコンの室外機を地中に置く」というものです。
エアコンの室外機を気中に置くよりも地中に置くほうが、夏場は外気中より冷たい地中の熱で冷却(放熱)し、冬場は外気中より暖かい地中の熱で加温(採熱)することができるため、少ないエネルギーで冷暖房することが可能となるのです。よって年間のエネルギー使用量が少なくて済みます。
地中熱ポテンシャルマップを活用しよう
エアコンを少ないエネルギーで利用できる地中熱利用は、地面があればどこでも利用できます。しかし、当然ながら場所によって地下の状況は異なります。砂層、岩盤層、粘土層など、地層の違い・特性・重なり具合により、地中熱の利用しやすさに差が生まれるのです。
そこで利用したいのが、「地中熱ポテンシャルマップ」。東京都では、地下の構造の違いによる地中熱利用のしやすさを色別表記し、一目でわかるマップを用意しています。
このマップでは、下記のことがが分かりやすく示されています。
- 見かけの有効熱伝導率の分布
- 建物種別ごとの採熱管本数の分布
- 建物種別ごとの放採熱量分布
自然のチカラを賢く利用し、地球環境を守る
実際のところ、地中熱利用はまだ一般的ではなく、初期投資や地中熱採熱管の設計などが専門的なため、採用されにくいのが現状です。しかし、資源の少ない日本においては、今後さまざまな資源活用・省エネへの取り組みの進行が予想され、地中熱も普及する可能性を秘めています。
地球環境を守ることに高い意識をお持ちの方は、ぜひ一度、地中熱利用を検討してみてはいかがでしょう。