最近の家づくりは、「無駄なものは省く!」という考えのもとで間取りを決めることが多くなったように思います。特に「廊下」は、「常時、人がいない場所なのだから、無駄なだけ」と一刀両断する設計士もおられます。でも、本当に廊下は必要ないのでしょうか? そこでさまざまな角度から検証し、メリット・デメリットをお伝えしたいと思います。
目次
「廊下がないことによる」メリット・デメリット
では、一般的によく言われている「廊下のメリット・デメリット」を列挙していきましょう。メリット・デメリットは対極ですので、ここでは「廊下がないことによる」メリット・デメリットを表記します。デメリットは、廊下があればメリットに変わりますので、注意して読み進めてください。
廊下がないことによるメリット
- 廊下がない分、居住空間を広く取れる 廊下分の建築費用が削減できる。
- その浮いた費用を他のこだわりに回せる
- リビングを通る設計になるため、家族の会話が増え、表情も見ることができる
- 生活動線が短くなる
デメリット
- プライバシーが確保しにくい。どの部屋もリビングから見えやすく、来客時にはさらに気を遣う
- 各部屋の音が漏れやすい。また料理の匂いも広がりやすい
- 動線が交差しやすい。来客中も、その前を通らなければならないことも
- 空間が広くなるので、冷暖房効率が悪くなり、その分、光熱費に跳ね返る
いかがですか? これらが一般的に言われているメリット・デメリットです。ですが、はじめて家を建てる編集部では、もう少し深堀して考えてみたいと思います。そうすることで、廊下の役割やメリット・デメリットがさらに見えてきます。
廊下をデザインとして捉えると、暮らしがより豊かに
廊下とは、「どこかとどこかをつなぐ通路」のこと。このように書けば、廊下は“機能のもの”と感じてしまうかも知れません。でもよく考えてみると、廊下は見せ方によってとても“おしゃれ”になります。素敵に設計すればデザイン性がおおいに増し、暮らしが豊かになるのです。
たとえば、玄関に入ると廊下が伸び、その先がガラス張りで借景が顔をのぞかせる。真っ直ぐに伸びた廊下に絵画をいくつか飾れば、そこはアートギャラリーに。このように廊下を機能としてだけで捉えるのではなく、暮らしを楽しむ空間として考えれば、廊下は十分に“アリ”となります。
空間がセパレートされることのメリットを考えよう
廊下は、「どこかとどこかをつなぐ通路」と言いましたが、言い換えるなら「空間と空間をセパレートする」役割も担っています。間取りを考えるにあたり、その恩恵を最も受けるのが「トイレ」。廊下がない一体空間型の間取りの場合、トイレの位置に悩みます。どうしても視界に入ったり、音や臭いに敏感になってしまうからです。
その点、廊下があれば空間がセパレートされ、視界に入ることもなく、リビングでくつろいでいたり、ダイニングで食事をしていても、音に気付くことはありません。またトイレを使用する人も気を使う必要はありません。
2WAY動線が確保され、暮らしの幅が広がる
廊下がないと、たとえば玄関からキッチンに行くルートは基本的に一つ。各居室への動線もしかりです。でも、廊下があれば、キッチンなどへのアプローチに2WAY確保することができ、より機能的になります。
来客時に、買い物袋を持ったまま前を横切るなんて、ちょっと気まずいですよね? 廊下はそういった気遣いや目隠しにも役立ちます。
健康面に悪い影響を与えてしまう可能性も注意しよう
一方、デメリットもあります。冒頭でも書きましたが、廊下は常時、人がいない空間です。だから全館空調の住まいでない限り、冷暖房を効かせることはないでしょう。よって冬場は、「ヒートショック」に注意が必要となります。ヒートショックとは、住環境における急激な温度変化によって血圧や脈拍が乱高下する現象のこと。脳卒中や心筋梗塞を引き起こす原因の一つとされています。
これはかなり深刻な話ですが、快適なリビングから暑く、寒い廊下スペースに出るのが不快に感じてしまうだけでもマイナスです。廊下にはそういった生活上のデメリットもあることを頭に入れておきましょう。
暗い廊下に出ると気持ちも暗くなる、なんてことも
常時、人がいない空間ということで、もう一つ。間取りを考える際、廊下をわざわざ“心地いい空間”にしようとする人はあまりいません。もちろん縁側を回り込む廊下のように、明るく風通しのいい廊下も存在しますが、和風の住まいでない限り、廊下は暗くなりがちです。
暗いからと言って、そこに人はいませんから、いつも照明を点けることもしません。よって、生活する中で移動する時、廊下に出るとどうしても暗く、心地いいリビングとのギャップを感じてしまいます。このような“暮らしの印象”も、検討材料にするとよいでしょう。
まとめ
廊下のメリット・デメリットを比較するときに注意したいのは、「廊下がある、なしで、生活にどのような影響が出るのか」を考慮しつつ、「廊下の活用法」も考えてみることです。リビングなら躊躇してしまう壁付けの大収納も、廊下の壁なら思い切って大きく使い切ることもできるでしょう。
もちろん、「廊下なし」の選択を否定するものではありません。先に示したように、廊下なしにも素敵な住空間を生み出すメリットがたくさんあります。お伝えしたいのは、間取り検討の段階で、早々と「廊下は無駄」と決めつけないこと。廊下を通路以外にどうやって生かすかのアイデアを出す大切さです。ぜひ、じっくりと検討してください。