【平屋】シニア夫婦が安心・快適に暮らすための平屋の工夫ポイント

子どもたちが成人し、それぞれ家庭を持った今、「家はそれほど広くなくてもいい」と考えるシニア層が増えています。「2階なんてまったく使っていない」「部屋数もそんなに必要としない」などの理由から、「平屋」が終の住処として人気を集めます。とはいえ、単純に間取りをコンパクトにすればいいというわけではなく、シニア向け平屋を設計するうえでは、重要なポイントがいくつかあります。


ポイント1/生活を便利にするコンパクト設計

シニア向け平屋間取り

シニア向け平屋を設計する際、おススメしたいのはやはり「コンパクトな設計」です。部屋数をなるべく少なくし、廊下もなくして、できる限りワンフロアに近い設計をすることをおススメします。

ワンフロアに近い設計にすることのメリットは以下の通りです。

  • 寝る、食べる、くつろぐなどがつながることで、便利に快適に暮らせる
  • 限られた敷地面積でも広さ、ゆとりが感じられる
  • 間仕切り、壁が少ない分、家族の姿が見られて安心。会話もしやすい

ライフスタイルやライフサイクル、生活動線をしっかりと考え、設計することが肝要です。コンパクトな設計をする際の注意点をもう一つ。トイレはなるべく寝室から近い場所に設置しましょう。


ポイント2/リビングと隣接する形で客間を設けておく

客間 多目的
リビングとつながる多目的な和室/ミサワホーム

夫婦2人、もしくは一人住まいになることで部屋数は最低限でOKですが、リビングと隣接する形で「客間」を設けることをおススメします。これがあれば、お子さま、お孫さんが遊びに来られても、泊まってもらうことができます。

普段は、引き戸を開放しておけばリビングがより広く利用できますし、開放感も増します。来客時には机を並べることで、大人数でも食事が楽しめるでしょう。


ポイント3/趣味の部屋、場所を設ける

コンパクトな設計は大切ですが、自分の時間をより楽しめる工夫も重要です。そこでおススメなのが、アトリエを設けること。

絵画や陶芸、DIY…。専用の趣味の部屋があれば、時間を持て余すなんてこともありません。また小さくても庭をつくれば、家庭菜園やガーデニングなども楽しめます。


ポイント4/縁側、アウトドアリビングを設ける

アウトドアリビング
リビングとつながるアウトドアリビング/セキスイハイム

縁側やアウトドアリビングがあれば、気軽に日向ぼっこしながら、お茶を楽しむことができます。こういった外と内をつなぐ中間地点は、人を招きやすく、お客様も立ち寄りやすいもの。地域の人々とのコミュニケーションを深める、便利で大切な場所となります。外から気軽にアプローチでき、教室やお店も開くことができるサロンスペースを設けるのもおススメです。


ポイント5/収納を少なく。そのために断捨離を徹底する

コンパクトな空間設計を実現する中で、ポイントとなるのが「収納」です。収納は、“使っていないものを置く場所”ですから、言ってみれば“デッドスペース”でもあるわけです。家づくりにおいて、「収納をたっぷりと」という要望は高いものですが、シニア向け平屋の場合、できる限り、収納を少なくし、その分、生活空間を広くすることを意識しましょう。

そのためには、まずは「断捨離」です。「いつか着るだろう」「いつか使うだろう」と思って取っておいているものは、まず着ません、使いません。思い切って整理しましょう。

収納用の納戸を設けると、間違いなく「開かずの扉」になります。どうしても納戸を設けたい場合は、生活空間を圧迫しないロフトや小屋裏スペースを活用しましょう。くつろぎスペースを充実させることが、シニア向け平屋の重要ポイントです。


「家庭内事故」を防ぐ、バリアフリー設計が大前提

シニア向け平屋を設計するうえでのポイントをご紹介しましたが、何よりも第一に考えなければならないことがあります。それは「家庭内事故」です。

内閣府や厚生労働省の調査結果を見ると、一年間の交通事故による死亡者数が3532人(2018年度)だったのに対し、家庭内事故による死亡者数は1万4984人。なんと4.2倍にもあたるのです。

「シニアと言っても、自分はまだまだ若い」と思う方も少なくないでしょう。でも、確実に年齢は重ねられ、身体に衰えが出てきます。今は元気いっぱいでも、シニア向け平屋を設計する際には、「バリアフリー住宅」にして、家庭内事故をしっかりと防止する必要があります。

段差をなくす

生活空間における段差をできる限り無くしましょう。家庭内事故で「つまずいて転倒」した例を見ていくと、「カーペットのめくれや、こたつの布団に足を引っかけた」「床に置いていた新聞に足を取られた」というものが見られます。

「こんな段差なんて段差じゃない」と考えず、特に生活動線上は、「完全バリアフリー」にすることをおススメします。柱やキッチンの天板の角などを「面取り」しておくと安全性が高まります。玄関と室内の段差を完全にフラットにすると、どうしても埃や虫が室内に入りやすくなりますので、その点は注意が必要です。

玄関へのアプローチには、「スロープ」を設けておきましょう。万が一、車いす生活になったときでも、負担が少なく移動できます。

手すり、フットライトを設ける

玄関や廊下、トイレなど、移動したり、立つ・しゃがむを行う場所には「手すり」を付けましょう。玄関には座って靴を履き・脱ぎできる「ベンチ」を設けると安心・便利です。また廊下には、足元を照らす「フットライト」を設置するといいでしょう。

温度差を無くす

シニアにとって気を付けたいのが「ヒートショック」です。ヒートショックとは、温度差による血圧の急上昇と、それによって引き起こされる心筋梗塞や脳出血などの症状のこと。暖かいリビングから急に寒いトイレや浴室に移動することで、事故リスクが高まります。

そこでおススメしたいのが、「全館空調」です。LDKや寝室、トイレなど、どの空間も快適温度に保てる空調システムですから、ヒートショックを防ぐことができます。全館空調の暮らしは快適なので、心地よく生活がしたいという方にとっても大きなメリットがあります。また、浴室を温められる「浴室暖房機」も設置しましょう。

メーターモジュールでの家づくり

万が一、車いす生活になった場合、廊下やトイレなどの広さが大変重要になります。シニア向け平屋を建てる場合は、生活空間にゆとりをもたせやすいメーターモジュールでの家づくりをおススメします。
詳しくは、【モジュール】「尺モジュール」、「メーターモジュール」って何? (ietatelu.jp)を参照ください。

引き戸を採用する

ドアは、開閉するための広さが必要となります。また、手前に開けば「体をかわす」動きが求められ、逆に奥に開く場合、向こう側にたまたま家族がいて「ぶつかる」リスクも少なからず生まれます。ほんの些細なことのようですが、年齢を重ねるほどに負担となります。

その点、引き戸は設計を工夫すれば無駄な空間はなくなり、コンパクトな暮らしを応援してくれます。体に負担がかかる動きも抑えられ、衝突リスクも解消されます。玄関ドアにもおススメです。ドアの場合、突風で急に閉まって指を詰めたり、逆に激しく開いて引っ張り出され、転倒すると言ったリスクがありますが、引き戸なら安全性が高まります。

高い場所に収納をつくらない

脚立などから落下してケガをするケースもとても多いです。収納は手の届く高さまでにしておきましょう。また、交換が必要となる電球は長寿命のLEDに。交換が必要な場合、高い場所の作業をしなければならないときは、お手伝いいただける方に依頼することをおススメします。

着衣着火リスクを考慮して、IHクッキングヒーターに

食事の支度中、着衣着火が起きる事故も増えています。シニアになると注意力が散漫になる傾向があります。IHクッキングヒーター(オール電化)なら、着衣着火を防ぐことができます。

また、憧れる方が多い「薪ストーブ」ですが、直接、火を扱う設備はできる限り避けたほうがいいでしょう。


まとめ

いかがでしたか? 間取りの工夫はもちろんですが、やはり設計するうえで気を付けたいのが「家庭内事故」への対処です。自分の将来の姿、そして暮らしは想像がつきにくいものですが、ぜひ設計担当者や高齢者住まいアドバイザーなどの専門家に相談しながら、安全・快適な終の住処を手にしてください。