【モダン和室】知っておきたいポイントとコーディネート事例

モダン和室

※画像提供:Tagle住まい

新しく住まいをプランニングする際、和室をつくるか、つくらないかで悩んでいませんか? 若い世代の生活スタイルを考えてみると、「和室は必要ない」と思う方も少なくないことでしょう。30坪~50坪の家などでは、欲しい部屋やスペースを優先すると、和室はどうしても優先順位が低くなりがちです。

そこで、はじめて家を建てる編集部は、住宅雑誌に掲載されている実例を調べ、和室がある家と無い家を集計してみました。すると「ある」が62%、「無い」が38%。ひと昔前の住宅に比べると圧倒的に和室が無い率が増えていますが、まだまだ和室が必要と考える人も少ないわけではなく、「和室をつくってよかった」というコメントが意外と多いのも印象的でした。

この記事では、和室の使い勝手や役割などを紹介します。ぜひご一読いただき、検討材料にしてください。和室のメリットや可能性に注目し、後悔しないように検討しましょう。


和室の歴史:そもそも日本の家の部屋は、すべて和室だった。

和室と言う言葉が生まれたのは、近代になってから。西洋風の部屋(洋室)が出てきたことで、その対義語として和室と言う言葉が誕生しました。明治から昭和初期にかけて、西洋建築の生活様式を模倣し、椅子とテーブルが採り入れられるようになります。そのことにより、日本の家の中に洋室が出現するわけです。もちろんそれは、上流階級での話し。一般庶民には馴染みのない生活でした。ちなみに「和室は畳」と思っている方もいるようですが、板間も和室です。

戦後、高度成長期を迎え、団地が誕生します。ダイニング・キッチン(DK)と呼ばれる台所と食堂が合体した空間に、椅子とテーブルが置かれるようになります。その頃から洋室と言う言葉は一気に広がりを見せ、住宅でもLDKの間取りが採用されていくのです。その一方、畳敷きの茶の間(和室)の存在感は、どんどんと失われていきました。

日本人にとって和室は優れた建築様式であり、日本の暮らしを柔軟に受け止めてくれる高い機能性を有したものでした。昔の日本の家には個室と言う概念がなく、暮らし方や用途に応じ、襖の取り外しで広さを可変させながら生活を送っていたのです。食事、就寝、だんらん、そして祭事。特に家族以外の人がたくさん集う祭事では、前室+床の間という、いわゆる“続きの間”が重宝され、襖を外すことで大広間に変化させることができるこの間取りは、どの家でも当たり前の設えでした。


和室あり!と答えた人の「モダン和室」のつくり方

実例を集計し、和室を採用した人たちが、日々どのような使い方をしているのかを調べてみました。そこから見えてきたキーワードは「多目的」。和室本来の優れた機能を、モダン和室としてしっかりと受け継ぎ、現代の暮らしに上手に生かしながら暮らされているようです。

リビング横タイプ

リビング横の和室

和室を採用したご家族の多くが、リビング横に和室をレイアウトされています。このタイプのメリットは次の通りです。

  • 生活の中心であるリビングやダイニングと連続させることで、日常的に利用することが可能。
  • 小さなお子様がお昼寝をしている時でも、キッチンから様子を眺めることができ、安心して家事をすることができる。
  • 洗濯物を畳む場所として使用するなど、多目的に利用できる。
  • デザイン性を追求することで、洋室空間の雰囲気にもしっくり馴染むとともに、空間のアクセントにもなる。

さらにリビング横タイプは、こんな使い方が可能です。

  • 子どもが宿題をするスタディースペースとして。
  • 子どもの遊び場、ライブラリーコーナー(図書館)として。
  • 洗濯物を畳む場所として使用するなど、多目的に利用できる。
  • 洗濯物の室内干し。
  • 幼児期は、子ども部屋兼家族みんなの寝室として。
  • 小上がりタイプの場合、床下を収納として利用することもできる。

独立タイプ

住友林業の伝統的な和室

リビングやダイニングとは離れた場所にレイアウト。独立したひとつの空間としてモダン和室が設けられているパターンです。このタイプのメリット・デメリットは次の通りです。

  • 用途は限定されるが、プライベートな空間としては機能する。
  • 仏壇を置くなど、家族にとって特別な場所にすることが可能。
  • 独立しているがゆえ、開かずの和室になる可能性がある。

さらに独立タイプは、こんな使い方が可能です。

  • 大切なお客様を招き入れる応接間。
  • 客間として(お客様の寝室)。
  • 洗濯物の室内干し。
  • 幼児期は、子ども部屋兼家族みんなの寝室として。
  • ご主人の書斎、奥様の趣味や家事の部屋。
  • いずれ親と同居する際や、子ども部屋として応用しやすい。

続き間タイプ

大人数を招いた場合に大活躍する続き間タイプ。今でも地方や格式の高い大きな家には残っています。このタイプのメリットは次の通りです。

  • 冠婚葬祭、盆暮れなど、親戚や知人が大勢集まったときでも、襖を外すことでしっかりと受け止められる大空間が生み出せる。

続き間タイプは、こんな使い方が可能です。

  • 兄弟や親せきの多い本家では重宝する。
  • 大切なお客様を招き入れる応接間。
  • 客間として(お客様の寝室)。
  • 冠婚葬祭。
  • いずれ親と同居する際に応用しやすい。

モダン和室のインテリア:センスを生かしてお洒落な空間に

コーディネート事例1

掘りごたつ

畳は縁のない半畳サイズの琉球畳を敷き、掘りごたつを設ける。和室の伝統的造作の地窓と吊り物入れで和のテイストを残し、球体の和紙照明と間接照明でモダンな印象を演出しています。

コーディネート事例2

住友林業の和室

コーディネート事例3

モダン和室ミサワホーム

家全体のインテリアを「シンプルモダン」に統一した中に和の空間を違和感なく溶け込ませた事例です。天井はリビングと同じデザインで連続性を持たせながら、琉球畳、吊り戸収納その下の床の間的空間が「和モダン」を主張しています。そして、間仕切り列柱も大切なアクセントとなっています。

コーディネート事例4

掘りごたつのある和室


まとめ

和室はもう時代遅れ。そんなイメージだけで判断すると後悔することになるかも知れません。和室を採り入れた人はその空間を上手く活用し、機能的な暮らしを手にしています。また、「和室=古臭い」は大きな間違いで、センスひとつで「モダンでお洒落な空間」に仕上げることもできるのです。

新しい住まいの計画段階で、利用目的や使い勝手をしっかりと見極めることをおススメします。和室は決して無駄なものではありません。ぜひその実力を見直して、一度検討してみてください。

※画像提供:Tagle住まい