家づくりを進めていく中で、「コートハウス」という言葉に出会うことがあります。「コートハウスって何だろう？」。今回は、そんな疑問にお答えし、コートハウスのメリットやデメリット、注意点などをお伝えしたいと思います。これさえ読めば、コートハウスの魅力に気づけるはずです。
コートハウスとは、壁に囲まれた中庭を持つ家のこと
いわゆる一般的な庭と違い、塀や建物の壁に囲まれている中庭ですから、プライバシーがしっかりと守られています。それを空間設計に採り入れ、暮らしの中に心地のいい広がりをもたらす住まいのことを、コートハウスというのです。
コートハウスは、もちろん広い敷地でも実現させられますが、むしろ日本向きといえるものです。「間口が狭い土地」でも、「庭を確保しにくい狭小地」でも、「隣家が迫る都市部」でも、壁に囲まれ、プライバシーが確保された中庭を採り入れれば、開放的で明るく、風通しのいい家を実現することができるのです。
外は閉じ、内に開く。これがコートハウス設計の基本
道路側に玄関とともに掃き出し窓を設けるプランがあります。なるべく外の光と風を取り込もうという狙いなのですが、コートハウスでは少し違った考え方をします。コートハウスの設計の基本は、「外は閉じ、内に開く」というもの。道路側にはあまり開口部は設けず、内側に中庭を設けて開く、という考え方です。こうすることでコートハウスならではのメリットがたくさん生まれます。
コートハウスの利点・メリット
プライバシーを確保しながら、開放的な住環境が実現できる
壁や塀に囲まれた中庭ですから、プライバシーがしっかりと守られます。よって外からの視線を気にすることなく過ごせるメリットがあります。中庭に面した窓にはカーテンなどをつけなくても大丈夫。その分、視界が抜け、空間をより広く、開放的に感じることができるのです。
採光と通風を確保し、景色も楽しめる
四方を壁や塀に囲まれた中庭を居住空間の中に取り込むことで、光や風を室内に効果的に取り込むことができます。中庭には屋根がありませんから、そこから明るい光が降り注ぎ、風も舞い降りるのです。中庭はいわば“光の柱”のような役割です。照明計画もしっかり施しておくと、夜もおしゃれに明るく照らしてくれます。また、シンボルツリーや箱庭的な設えを施せば景色が楽しめ、季節の移ろいも感じられます。
アウトドアリビングとして楽しむことができる
居住空間とつながるようにレイアウトされる中庭はとてもアクセスが良く、第2のリビング、アウトドアリビングとして活躍してくれます。テーブルと椅子を置いてお茶や軽食を楽しんだり、おうちキャンプをしたり…。DIYの作業場、友人を招いてのパーティなど、使い勝手は多岐にわたり、暮らしにプラスαの楽しみをもたらしてくれます。
家族の生活の中に、程よい距離感を生み出せる。二世帯にもgood！
たとえばLDKと寝室や子ども部屋の間に中庭があれば、家族の生活の中にも程よい距離が生まれます。カーテンがないため向こうの様子もなんとなく伝わります。家族がつながっていながら、個人も大切にできる。これもコートハウスの魅力なのです。この中庭を巧みに利用し、二世帯同居・住宅として上手にプランニングしている方も少なくありません。
防犯面に優れ、外部の影響を受けにくい
コートハウスは、“外は閉じる”設計ですから、外部からの侵入を防ぐ、防犯面でのメリットがあります。道路側に大きな掃き出し窓がないため、ガラスを破っての侵入の心配もありませんし、それが怖くてシャッターを閉め切った生活になることもありません。また、道路側の景色の変化（建物の建て替えや新築など）に左右されませんし、クルマの騒音なども遮断しやすくなります。
コートハウスのデメリット・注意点
建築コスト、メンテナンスコストが余計にかかる
壁が多くなる分、建築コストは多くなりますし、メンテナンスコストも余計にかかります。また、中庭には雨が降りますから、排水計画もしっかりと施す必要があります。最近はゲリラ豪雨も多いので、「想定以上の雨が降って排水が間に合わない」というようなことにならないよう、対策が必要です。
居住空間が狭くなる
中庭分だけ、当然、居住空間が狭くなります。しかし、中庭を狭くしすぎると、楽しみ方に制約が出るだけでなく、光や風の取り込みにも悪影響を及ぼします。そのあたりのバランスは、建築会社と十分に話し合いましょう。
中庭に面した間口が広くなるため、外気の影響を受けやすい
自然光や開放感を手にするために、中庭に面した窓は大きく取ることになりますが、そうなると間口が広がるため、外気の影響を受けやすくなります。断熱性や気密性といった住宅性能・窓性能が求められますし（コスト増）、対応しないと夏は暑く、冬は寒い家になる可能性があります。
外からの視線が届かない分、防犯面に気を遣う
先ほど、防犯面においてメリットがあると述べましたが、逆に外からの視線がない分、万が一、不幸にも侵入された場合、ご近所や通行人から発見されにくくなるというデメリットもあります。
まとめ
いかがでしたか？ デメリットも無いわけではありませんが、コートハウスは特に狭い敷地を有効活用し、快適な暮らしを送りたいと願う方には魅力的なプランです。
京都の町屋には、通り庭や光庭というものがあり、そこから光や風を取り込み、景色を楽しみます。狭い間口であっても、とても快適で開放的に感じさせる手法は、実は日本では古来より用いられてきたものなのです。
ぜひ上記記事を参考に、空間を巧みに利用し、明るく伸びやかで風通しがよく、暮らしに楽しみ方をプラスしてくれる住まいである「コートハウス」を検討してみてください。