光と風と緑を味方にする家

太陽の恵みを感じられる家。心地よい風や四季折々の緑を愉しめる暮らし。自然の“心地よさ”を享受できる住まいのつくりかたを、ハウスメーカーの皆さんに聞いてみました。

旭化成ホームズ 藤田 耕一郎さん
設計業務に携わった後、商品開発部門に異動。実邸設計の経験を生かして、新商品の開発などを手がけている

三井ホーム 内田 敦さん
営業所長を務めた後、商品開発部門に異動。新商品開発のほか、モデルハウス出展時のオブザーバーの役割も担う

ヤマダホームズ 佐藤 荘一さん
入社以来、ずっと設計一筋。実邸の設計をメインで行うかたわら、モデルハウスの設計にも関わる


周りの環境をよく見て、効果的な光の取り入れ方を考えよう

家づくりを考えている人に“どんな住まいにしたいですか?”とたずねると、必ず“明るい家”という条件が挙がるとか。誰もが、光がたっぷり入る、明るくて気持ちのいい家を思い描いているようです。でも、敷地条件によっては、十分な大きさの窓がとれないこともあります。また、周辺環境によっては、窓が大きいと外から室内が丸見えになってしまうことも。

「“南側に大きな窓”というのがスタンダードな考え方ですが、意外と、プライバシーの問題でカーテンが閉めっ放しになるケースもよく見受けられます。せっかく十分に光が入る窓を設けたのに、昼間から室内が薄暗くなってしまうのはもったいないですね」と、ヤマダホームズの佐藤さん。「外構でカバーできればよいですが、そのような余裕がない場合は、南側の大きな窓に必ずしもこだわらなくていいと思います」。たとえば、北側の窓でも明るさは十分確保できます。敷地条件をよく見極めて、どの方角から採光するのがよいかをじっくり検討する必要がありそうです。

ハイサイドライト(高窓)やトップライト(天窓)で、プライバシーを確保しながら光を取り込む方法はおすすめですね」と三井ホームの内田さん。直射日光にくらべて、天空光※は部屋全体をまんべんなく明るくしてくれる効果があるそうです。吹抜けを設けて、上からの光を採りこむのも有効です。また「白系の明るい壁や天井、明るめのフローリングにすると、室内で光が反射して明るく広々と感じます」という技も。ただし、本や家具が増え、壁が物で覆われてくると、光が吸収されて効果が薄れるので注意が必要だとか。
※天空光…直射日光以外の、天空のあらゆる方向から地上に到達する光。空気分子などによる散乱・反射の結果もたらされる。

旭化成ホームズの藤田さんも「“明るさ”と“日当たり”は違います。直射日光が入らない窓でも、室内を十分明るくできることを知っていただきたいですね」と語ります。また「建物をL字型にする、中庭をつくる、2階リビングにするなどプランニングの工夫で、上手に光を取り込むことが可能です」。プランニングでは“どの部屋を一番明るくしたいか”を考えることも大切だとか。その際、“リビングを明るく”と考えがちですが、たとえば妻が専業主婦で、日中はキッチンやダイニングまわりで過ごすことが多い場合、リビングよりDKの明るさを優先した方が心地よく過ごせるはずです。

敷地条件やライフスタイルなど、トータルな視点でわが家に一番合った“光”の取り込み方を考える必要があるということですね。


窓から入る“暑さ”“寒さ”にも留意することが大事

光の取り込み方を考える一方で、忘れてはいけないのが“暑さ・寒さ”の問題です。幸いにして南側に大きな窓を設けることができても、夏の暑さや冬の寒さに悩まされては困りますね。開口部=窓は、熱の出入りが一番多い場所。何の対策も考えていないと、住み始めてから“こんなはずでは……”という結果になってしまいます。

「夏、室内に熱を入れないためには、窓の外でシャットアウトするのが一番です。オーニングや庇、パーゴラなどで、直射日光が室内に入らないような対策をしておきましょう」と三井ホームの内田さん。旭化成ホームズの藤田さんも「遮熱複層ガラスや高断熱複層ガラスを用いて、窓からの熱の出入りを上手にコントロールしたいですね」とのこと。ヤマダ・エスバイエルホームの佐藤さんからは「“夏の西日対策には遮熱複層ガラス”など、方角や季節、地域によりガラスの選択を考えて」とアドバイスがありました。夏の強い日差しには遮熱複層ガラスが有効ですが、冬場は太陽の暖かさを取り込みたいので、季節による日射の違いも考慮に入れて窓ガラスを選ぶ必要があるのです。もちろん、プランニングや空調計画も、快適な温熱環境づくりには欠かせない要素となります。


外からの風を上手に取り込み、家の中の空気の流れをつくる

住まいの高気密・高断熱化で空調の性能も向上していますが、春や秋には心地よい自然の風を愉しみたいですね。また、家の中をうまく空気が流れることで、たとえば夏の暑い空気を自然に外に逃がすこともできます。

「外からの風を上手に建物内に取り入れるためには、敷地を観察することが大切です」と旭化成ホームズの藤田さん。建て替えの場合は、施主が長年住んでいる土地なので、“夏は風が通りにくい”などの状況を把握している場合が多いとか。一方、土地を購入して新築する場合は、住宅メーカーの担当者に敷地をじっくり見てもらうことが大事です。また、「住宅密集地でも、家と家との間には必ず風が通ります。周辺環境を考慮しながら、建物の配置を考えるという視点が大事です」とヤマダ・エスバイエルホームの佐藤さん。「地域によって、風の向きも違います。東京なら夏は南風、冬は北風が吹きますが、別の土地に行くとまた異なる風の吹き方になるんです」と三井ホームの内田さん。その土地ごとの“風の性格”を知ることが必要になります。

風を上手に取り込むには、窓の形や配置を工夫することが大事。たとえば上の写真のような、縦に細長く上下が別々の方向に開く窓は、効率的に風を取り込めます。人が侵入できない狭い幅なので、防犯面でも安心です。

また、家の中に空気の流れをつくり自然な換気を促すには、上下の空気の動きをつくるのがポイントです。たとえば、北側の屋根にトップライトを設けるのは有効。暖かい空気は上に行くので、上部に小さくてもいいので出口となる窓を設けましょう。空気の流れをつくるためには“入り口だけでなく、出口もつくる”ことが大事です。また、室内ドアの上に欄間を設けたり、間仕切りに格子などを使うのもいいですね。スキップフロアなど、床面に高低差があるプランも、自然な風の流れをつくることができます。


メンテナンスを考慮しつつ、緑をプランに生かす

目に優しいだけでなく、夏の日差しや冬の寒風もさえぎってくれる緑。効果的な緑の取り入れ方も知っておきましょう。

「樹木は、葉の蒸散作用によって周りの熱を奪い、涼しい空気を生み出してくれます。建物の南側に木陰となるような樹木を植えたり、庭に芝生を植えると暑さ対策に有効です」と三井ホームの内田さん。芝生の手入れが大変な場合は、保水ブロックなどで代替することもできるそう。また、建物北側の常緑樹は、冬の北風をさえぎる役目を果たしてくれます。

「南側に庭をつくり、落葉樹を植えて夏は日差しをさえぎり、冬は落葉して日だまりをつくる。日本に昔からあるこのプランは、とても理にかなっているんですね。また、四季折々に表情を変える木々を見て、季節の移り変わりを感じることもできます」とヤマダ・エスバイエルホームの佐藤さん。ただし、日差しをさえぎるためには、ある程度大きな木であることが必要。その分、落ち葉の始末などが大変になるという側面もあります。

「植物はメンテナンスに手間がかかるもの。理想的な植栽計画を行っても、維持できなければ無駄になってしまいます。手入れにどのくらい時間を割けるか? そもそも緑の世話は好きか? 虫は苦手か? 設計者とざっくばらんに話をして、現実的なプランをたてることが大事です」と旭化成ホームズの藤田さん。「たとえば、夏の間だけ緑のカーテンをつくるなど、住み手が負担に感じない、楽しんで世話をできる形にするのも一つの手です」。緑は、快適さをもたらすだけでなく、心理的にも潤いを与えてくれる大切な存在。だからこそ、無理なく維持していける“緑の計画”を建てることが大事だといえます。

光と風と緑。いずれも上手に取り込むためには、敷地の状況や周辺環境、地域の特性などをしっかり把握することが大切。プランを考える前には、依頼先候補の住宅メーカーの担当者に現地に同行してもらい、自分の土地を見てもらうことをおすすめします、


こんなミカタをしてみよう

  • 周りの環境をよく見て、光や風を効果的に取り入れる
  • 窓からの熱の出入りを考慮する
  • 家の中の空気の流れを上手につくる
  • 緑を効果的に配置する。ただし手入れのことも考えて