地震に負けない!強い家のつくりかた

地盤調査

地震大国・日本に住む以上、いつどこで大きな揺れに見舞われても不思議はありません。大切な命と暮らしを守るべく、住まいの地震対策は現在、どこまで進んでいるのでしょうか。ハウスメーカーの皆さんに、最新事情を聞いてみました。

大和ハウス工業 山下 仁崇さん
入社以来、総合技術研究所に勤務。「一戸建てやマンションなどの地震対策のほか、道路や工場からの生活振動なども守備範囲です。ひたすら“揺れ”を研究する毎日です(笑)」

トヨタホーム 泉 孝治さん
設計業務に携わった後、現在は営業企画室で商品販促の仕事に従事。「お客様向けのカタログや、営業スタッフ向けのツールの制作を通じて、商品のよさを伝えるべく奮闘しています」

ヤマダホームズ 藤本 和典さん
設計や研究開発、商品開発などを歴任。現在は技術部で「構造の話やスマートハウスなど、専門的な内容をお客様や社内に分かりやすく伝える“通訳”のような役割を担っています」


今の建築基準法レベルの建物なら、倒壊の心配はないものの…

現在の『建築基準法』では”大規模の地震(阪神・淡路大震災クラス、震度6強~7に達する程度)で倒壊・崩壊せず、人命は守られる程度の耐震性を持つ建物にする”ことが定められています。つまり、法律の基準を守って新築した家ならば、大地震でも倒壊する心配は少ないといえます。

ただし、建物が傾いたり設備が壊れたりしたら、たとえ倒壊はしなくても、その先住み続けることは難しくなってしまいます。やはり、法律が定めるレベル以上の耐震性を確保することが、将来の安心につながるといえるでしょう。


大きな揺れに耐える、より頑丈な住まいにするために

ハウスメーカーでは、より耐震性を高めるために研究を重ね、実際の家づくりに活かしています。工法や構造は各社により異なるため、各社それぞれの工法・構造に合ったベストな方法を取り入れています。

大和ハウス工業の山下さんによれば「耐震の基本は建物を“強くする”こと。当社の鉄骨系住宅は、鉄骨の柱で垂直方向の力に耐え、ブレース(筋交い)を内蔵した耐力パネルで水平方向の力に耐えるしくみになっています」とのこと。地震は特に横揺れのダメージが大きいのですが、ブレースがいわば“つっかい棒”の役割を果たしてふんばってくれます。ちなみに鉄は硬いというイメージがありますが、粘り強くしなやかに伸びるという性質もあるのだとか。

トヨタホームの泉さんによれば「当社も鉄骨系ですが、鉄骨ラーメン構造という、柱と梁が枠のように一体化した構造が特徴です。力が集中する柱と梁の接合部には、変形防止のプレートを内蔵し強化しています」とのこと。鉄骨製のボックスのようなユニットを組み合わせて、建物をつくっていく方法。つまり、強い“箱”を重ねる形で地震の力に耐えるしくみです。「各ボックスは、工場内で組み立てて工事現場に運ぶため、品質が安定するというメリットもあります」。

ヤマダホームズの藤本さんは「当社では、木の特性を生かした工法を採用しています。木は、圧縮・曲げ・引っぱりなどの強度バランスに優れた素材。木の枠と合板を接着・一体化した壁パネルを、独自に開発しました」と語ります。釘を数多く使用すると木材が割れてしまうため、耐久性の高い接着剤を使うことで強度を確保。建物全体が六面体の箱のように“面”で揺れを受け止めるしくみだそう。横揺れでかかる力にも変形しにくく、変形しても元に戻る粘り強さも特徴だということです。

各ハウスメーカーの担当者のお話を伺うと、大きな地震に対する耐震性は十分に確保できていることがわかります。工法はメーカーにより異なりますが、それぞれの工法に合った耐震構造がきちんと考えられているということです。


地震対策として注目の制震

耐震に加え、さらなる地震対策として注目されているのが“制震”です。制震とは、地震のエネルギーを吸収し、揺れを制御するしくみ。その結果、建物の変形を防いだり、損傷を小さくしてくれます。耐震は揺れに対して“ふんばって耐える”、一方、制震は“いなす”“逃がす”というイメージです。

制震

「自動車のショックアブソーバーをヒントに、オイルを使った制震装置で地震の揺れを吸収するしくみをつくりました」(トヨタホーム 泉さん)。「変形することで地震エネルギーを吸収する、粘弾性体という素材を組み込んだ制震パネルを採用しています」(大和ハウス工業 山下さん)。制震装置の素材や形状はメーカーにより異なりますが、壁内に組み込み、2階建ての場合は1階に数か所設置することが多いようです。建物の大きさにもよりますが、費用は平均50万円くらいが目安です。

また「当社の場合、木質パネルが面で支えるため構造自体が変形しにくく、制震装置が効果を発揮するほどの変形が起こりません。また、接合部に力がかかった際、木の特性としてうまく“こすれて”制震的な効果を発揮してくれます。そのため、あえて積極的にはお薦めしていないのが現状です」(ヤマダホームズ 藤本さん)という話もあります。建物のつくりによって制震装置の要不要は異なり、必ず設置した方がいいというわけでもないようです。費用もかかるので、設置を検討している場合はハウスメーカーに相談し、きちんと話を聞いた方がよいでしょう。

制震装置をつけても、体感としての揺れに大きな違いは感じないといわれます。制震のメリットは、建物へのダメージを減らすこと。制震で建物の変形を防げれば、クロスの破れやタイルの落下など、内外装の被害を防げるという利点もあります。


建物に揺れを伝えない“免震”

高層マンションなどで採用されている“免震装置”。近年、住宅にも採用されるようになってきました。免震は、耐震や制震と異なり、地震の揺れそのものを建物に伝わりにくくするしくみ。基礎と建物の間に免震装置を設置し、地震の揺れを受け流して、建物の揺れを大幅に減らします。装置には、ボールベアリングなどが組み込まれています。設置条件や装置のしくみにもよりますが、地震のエネルギーを数分の1にまで低減するといわれています。

「震度5弱以上の大きな地震で作動します。揺れは、ゆっくりした横揺れになるイメージです。実際に体験した方の話によると“船酔いのような感じ”をうけたそうです」(大和ハウス工業 山下さん)。震度4までの地震では作動しないので、小さな地震の場合は耐震構造で受けとめます。つまり、免震装置を採用しても、小さな地震は同様に体感しますし、大地震でも全く揺れないというわけではありません。

大きな地震で激しい揺れを感じずに済み、建物や家財の損傷も少なくて済む、精神的なダメージも少ないなど、免震には多くのメリットがありますが、一方で制限もあります。まずはコスト面。建物の大きさにもよりますが、3~400万円くらいの費用がかかります。また、軟弱地盤や液状化の危険性がある場所には設置できません。

「免震装置が作動した場合、建物本体が数10センチ動くので、周辺にスペースの余裕が必要ですし、室外機も少し離して置かないといけません。そのほか、デザイン面でも多少の制限が生じます」(トヨタホーム 泉さん)。「実際に大きな地震があった場合はもちろん、数年に一度は、床下の免震装置の点検をしておく必要があります」(ヤマダホームズ 藤本さん)。免震住宅は、一般の耐震・制震住宅とは違った配慮が必要になるようです。それでも、先の東日本大震災を経験した各ハウスメーカーの入居者からは「免震装置を取り入れてよかった」という声が聞かれたとか。滅多にないこととはいえ、激しい地震に見舞われたとき、ダメージを大きく減らす効果は実証されているようです。

耐震性を高めた家をベースに、さらに制震や免震を取り入れるか否かは、迷うところ。住んでいる地域や、予算、家づくりの条件などにより、選択肢はさまざまです。また、工法によっても判断は異なります。やはり、わが家にとってベストな方法を、一緒に探ってくれるようなハウスメーカーに依頼することが大事だといえるでしょう。


ポイント!こんな見方をしてみよう

  • 大地震でも倒壊しない「耐震性能」はスタンダード
  • 「制震」は建物へのダメージを減らしてくれる
  • 「免震」は揺れそのものを建物に伝えにくくしてくれる
  • 「制震」「免震」をプラスするか否かは、諸条件によって判断が異なる
  • わが家にとってのベストな方法を、ハウスメーカーに相談しよう